第79話
さくらがいなくなって、もう何日経っただろうか・・・
ヒナリよりヨルクの方が焦燥感が激しい。
問い詰めたらやっと重い口を開いた。
「神が・・・さくらを『呪い』から守るために記憶を封じて『閉鎖した世界』に閉じ込める計画をたててた」
きっと『いまさくらがいる場所』は『そこ』なんだと思う。
ヨルクの言葉に俺たちは言葉が詰まった。
ヒナリは『呪い』のことを知らない。
だから『ヒナリのいる前』では何も言えなかったようだ。
「絶対離さないって。相手が神だろうとさくらは渡さないって・・・さくらを絶対守るって・・・そう誓ったのに・・・」
ヨルクは繰り返し自責の念を口にする。
そんな時だった。
さくらの寝室でさくらを思いながら過ごしてたヒナリが悲鳴をあげた。
直後に寝室からポイッと文字通り放り出されたヒナリ。
「な・・・な・・・な・・・」
言葉になっていない。
ヨルクが駆け寄るが、床にペタンと座り込んでいるヒナリは全身をワナワナと震わせる。
「なんで放り出されなきゃいけないのよー!」
「ヒナリ落ち着けって。何があったんだよ」
「ハンドくんたちよ!ハンドくんたちが突然私を部屋から追い出したのよ!」
「なんじゃと!」
「ヒナリ。本当にハンドくんたちが『帰って来た』のか!」
「そうよ!・・・・・・え?」
ようやくヒナリにも『状況』が飲み込めたようだ。
寝室の扉に飛びついて開けようとノブを回すが開かない。
「ちょっ・・・ハンドくん!お願い!開けて!さくら!さくら!」
ヒナリが扉を泣きながら叩き続ける。
トントントンと聞き馴染んだ音に、全員・・・扉を叩き続けていたヒナリまでが動きを止めて座卓を見た。
そこにはハンドくんたちとの『会話』で使っているホワイトボードがたてかけられていた。
『
「望むところだ!」
「もちろん『さくらのこと』よね!」
ヨルクとヒナリはハンドくんの言葉に興奮気味だ。
「2人とも落ち着きなさい」
「大人しく出来ないなら
セルヴァンの言葉で、素早く畳の上に正座する2人を見てドリトスと苦笑する。
「こんな状態でも良ければお願い出来るかね?」
ドリトスの言葉と共に、部屋に結界が張られた。
そして『金色に輝く
その事に全員が目を丸くした。
・・・以前、『飛空船』事件で現れた神々は『金色に輝く
金色の光が収束して、男神こと創造神はその場にいる4人を見遣る。
「キミたちには『さくら』のことを話そう。その上でどう判断するかはキミたちの自由だ」
ヨルクやヒナリは黙ってこの男神を見つめる。
2人はさくらのため『だけ』に大人しくしていた。
ここで男神の機嫌を損ねたら、二度とさくらに会えない気がしたからだ。
『さくら』は、女神の不注意から『元の世界』に居られなくなり、この世界に『住居ごと』送られたそうだ。
そして『この世界で生きていけるように』という理由から、彼女の身体の細胞を『適応化』させた。
・・・細胞が『安定』するまでの数日間、さくらは高熱を出し続けていたらしい。
そして熱が下がった後は無人島を使って、この世界特有の『瘴気の混じった空気』に身体を慣れさせていった。
その時に使った無人島の『意思』が、さくらを『所有者』として認めたらしい。
そしてその無人島の一つに『別荘』が作られたそうだ。
以前さくらの言っていた『島持ち』『別荘持ち』は、このことを言っているのだろう。
「さくらは『精神的』には強い。・・・しかしそれを持続させ続けるのは難しい」
そして『ココロ』は
だからこそ、周囲の『気配』に敏感だ。
・・・特に『怒気』など
今回、さくら本人はそれを『見えない恐怖』という形で受け取ってしまった。
恐怖で混乱したさくらは精神に負荷が掛かってしまい壊れる寸前までいっていた。
そんなさくらのココロを守るために『此処から引き離した』そうだ。
「いま・・・さくらは眠り続けることでココロと身体を癒している」
いつ目を覚ますかは分からない。
今日明日目覚めるかもしれない。
何日も。何ヶ月も。何年も。
このまま一生涯。
ずっと目を覚まさない可能性だってある。
目を覚ましたとしても筋力は落ちているから身体を動かすことも出来ない。
当分の間は『寝たきり』のままだ。
ひとりでは何も出来ない。
筋力だけを手っ取り早く回復させるには『今いる場所』で休ませる方がいいのだが。
「『さくらのココロ』を癒すにはキミたちのそばが一番だと思っている。ただ、さっきも言った通り目を覚ましても『寝たきり』状態が続く。もちろんキミたちにかかる負担もそれだけ大きくなる」
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