第54話
「私がキライになったからいなくなったのかなぁ?」
「・・・さくら?」
さくらを見ても寝息をたてて寝ているだけ。
昨日のハンドくんの説明だと、精神疲労は神様でも治せないと言っていた。
「なんで
「ヒナリ」
今のさくらにとって『ゆっくり眠る』のが良いことなんだけど。
・・・本音はさくらのそばにいたい。
でも、セルヴァン様に再度呼ばれて部屋を後にした。
「あ?さくらは?」
セルヴァン様に寝室から出され、隣の部屋でハンドくんが出してくれた朝食をセルヴァン様やドリトス様と一緒に頂いた。
そうして、さくらの心配以外に何もしないで時間を過ごしていた。
1時間ほど経った頃・・・ハンドくんがテラスのカギを開けたら、そこからヨルクが部屋に入ってきた。
「今までどこに行ってたの!」
ヒナリが今までの不安をぶつけるように、ヨルクを掴んで前後に揺さぶる。
「家だよ、家!コレ取りに行ってきた」
ヨルクが腰に付けているポーチから薄い青色をした柔らかな布を取り出した。
セルヴァンやドリトスにもそれは見覚えがあった。
翼族の子供が必ず身につけているものだ。
「これって・・・」
「オレが貰ってほとんど使わなかったヤツ」
翼族は空をとぶ。
その分、陽の光を強く受ける。
子供にとって、強い陽の光は『害』にしかならない。
そんな子供にこの布を身につけさせることで、全身に受ける陽の光を『ゼロ』にまで抑えられる。
ヨルクは翼族には珍しく、陽の光に対して生まれつき『耐性』を持っていた。
そのため貰って1、2回使っただけでしまい込んでいた。
『陽の光』がさくらの身体に悪いと聞いて、この羽衣を思い出したのだ。
さくらが深く眠ったのを確認したヨルクは、そっと抜け出して家まで飛んで帰ったらしい。
「さくらが起きる前に戻るつもりだったんだよ」
それが「ちょっとついでにセリスロウの城に『お使い』に行ってきてくれ」と手紙を頼まれて。
城でも「これを渡してほしい」と頼まれて。
「と言うわけで、コイツが頼まれたもんだ」
「ほらよ」とセルヴァンに『木箱』が手渡された。
セルヴァンが蓋を開けると、中には木製のブレスレットが一つ入っていた。
添えられた手紙には『天罰騒動』での対応に感謝する旨が書かれていた。
「ほう。『セイジュ』のブレスレットか。『魔除け』『悪意除け』じゃな」
『悪意』に弱いさくらには最高のプレゼントだろう。
セルヴァンとドリトス様からさくらの話を聞いた。
ここへ来てから昨日までの3ヶ月のことを。
瘴気で善悪の判断力を失い、狂い始めていたジタンの父親たちのせいで遅々として進まない話し合い。
そして立て続けに起きた『魔物の浄化』と『天罰騒動』。
そしてその時の正確な対応と対策。
セリスロウ国のマヌイトアにいたオレたちもセルヴァンからの連絡で『軽度の目眩と耳鳴り』だけで済んだ。
その後はずっとこの部屋と寝室で過ごしていて、ジタンの案内で王城内を見学しているときに起きた『さくら暗殺未遂事件』。
その時に向けられた『悪意』で高熱を出して寝込み、やっと起きられたと思ったら昨日の『飛空船事件』。
そして今もまた熱を出して寝込んでいる。
「なあ。なんでさくらが狙われないといけないんだ?」
「・・・さくらを手に入れれば、自分たちにも『神の加護のおこぼれ』が得られると思っている
一部の者たちは、さくらを攫い『人質』にすることで、神々を『思い通りに出来る』と思っている。
実際、コーティリーン国では暴行で言うことを聞かせるようにジタンに言ってきた。
ジタンはあえて言わなかったが、「チカラずくで『襲ってでも』言うことを聞かせろ!」と言われていたのを、セルヴァンとドリトスは通信士から聞き出していた。
・・・あの
直後に下された『天罰』。
直接、さくらと関わったことのない通信士ですらエルフ族の言葉に腹を立てて、天罰で悲鳴をあげる通信の向こう側に「神様万歳!」と喜んでしまったそうだ。
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