第49話
「これは一体?」
ジタンが屋上庭園に入ると、芝生の上で眠るさくらを真ん中に、翼族2人も一緒になって気持ちよさそうに眠っている。
ヨルクはさくらに腕まくらをして、2人の翼がさくらを覆って天然の羽毛布団になっている。
「さっきまで、3人でとんで遊んどったんじゃよ」
ドリトスに説明されて、ジタンは大きくため息を吐いた。
さくらたちを気にはしていたが、父が国王という職責を全う出来ない今、自分は『国王代理』として各所へ対応しなくてはならなかった。
やっと時間を作って屋上庭園へ来てみれば・・・
「ジタン。コイツらが寝ている間に」
「はい。それでは奥のテーブルで」
セルヴァンに促されて、芝生から一番離れたウッドテーブルに移動する。
寝ているとはいえ、3人には聞かせたくない話をするのだから。
「コーティリーン国の飛空船に乗っていた者はすべて『見えない
乗員全員を『保護』するために、神官を通して神々には一時的に天罰を止めてもらった。
そして神殿の地下へ『保護』するまでの間に、色々と聞き出すことが出来た。
今回狙われたのは、さくら様ではなく翼族の2人だった。
エルフ族は翼族を初めは
その背にもつ翼を。
風を纏い自由に飛び回る姿を。
しかしそれは
翼の代わりに『飛空船』を開発したが、翼族のように『自由に空をとぶ』事は出来なかった。
そして『目障りなら消してしまえばいい』と思うようになった。
思ったからと言って、それを『実行』するなど到底有り得なかった。
今回、翼族と共にいた『女神に愛されし娘』をも見境なく殺そうとしたことを、神殿に届いた『神々の怒り』で知ったコーティリーン国。
神に『知らぬ存ぜぬ』『預かり知らぬ』を繰り返したそうだ。
もちろん『悪いと思っていない』のだから謝罪はしていないらしい。
「自分たちは『神の
そして国内では「『女神に愛されし娘』はニセモノだ。自分たちエルフ族こそが『神々に愛されし種族』だ」と神殿に・・・神々に『訴えた』らしい。
「神は何も言わなかった。それは自分たちの主張が正しいことをお認めになったからだ!」と言い、「『ニセモノの娘』を引き渡せ!」と騒いでいる者もいるらしい。
さらに彼らは、「事態を重く見て『聖なる乙女が召喚されて瘴気が薄くなる』まで外交を控える」とエルハイゼン国に言ってきた。
・・・さくら様が『指摘』していた事だ。
ただ『乙女が浄化して当然』と考えているのは、エルフ族が乙女だけでなく『短命種族』である人族を見下しているからだ。
更にコーティリーン国からは『公式』に「『女神に愛されし娘』を巻き込んだのは『偶然』であり、さくら様から神々に執り成すように『なんとか』動いてくれ」と懇願された。
しかし乗員たちの話だと、翼族と共に空をとんでいた
もちろん、ジタンはコーティリーン国からの懇願を断った。
乗員たちの『自白』を伝えて。
そして「『なんとかしろ』とは具体的にどうすれば?」と聞いたら「チカラずくで言うことを聞かせろ!」「言うことを聞くまで殴って痛めつければ良いだろ!」「どうせ乙女ではないのだから殺しても問題はない!」と怒鳴られた。
直後に『天罰』が下ったのだろうか。
幾つもの悲鳴がしばらく続いて、そのまま通信は切れた。
他国には時間を指定して『同時通信』を開き、コーティリーン国が『女神に愛されし娘』を翼族と共に殺そうとしたことと、『神々の怒り』を受けている事をすべて伝えた。
そして、最後となったコーティリーン国との通信も話し、「このまま国交を絶つ意志もある」旨を伝えた。
各国の代表もさすがに「翼族と共に『女神に愛されし娘』を殺そうとした」ことや「チカラずくで言うことをきかせようとした」ことを危険視している。
「殺しても問題ない」の発言には絶句していたが。
「神が愛している娘を傷つけるとか異常だと思ったが『殺しても問題ない』は最早、常軌を逸脱しているとしか思えない」との発言も見られた。
獣人族とドワーフ族は特に、お会いしたことのないさくら様を
両族は後ほどドリトス様・セルヴァン様両名から執り成してもらう事になった。
翼族からは『同時通信』後に通常通信で「エルフ族との問題にさくら様を巻き込んでしまい申し訳なかった」と謝罪された。
神殿を通して神々に謝罪を伝えた方が良いことを話してから「お二人は無事ですよ」とお伝えすると「感謝する」と言って通信は終了した。
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