第46話
屋上庭園はガラス張りだから、翼族からはよく見える。
そこに偶然ヨルクたちがさくら様とお会いして、少しでも近くから見せようとしたのも『問題はない』だろう。
実際に飛空船からは、かなり離れた場所を飛んでいたのだから。
しかし・・・
3人は前触れもなく攻撃を受けた。
もし航路を妨害しているなら、警告音を鳴らし、それでも退かなければ『威嚇』もありえただろう。
しかしコーティリーン国の飛空船は3人を狙って撃っていた。
「今すぐ神殿に人を送って下さい!」
これは『誰を狙った』のか、神々ならご存知でしょう。
そうでなくても、一時的に天罰を止めていただかなくては。
彼らをこの場に放置して、魔物の餌食にするわけにはいかない。
そしてコーティリーン国と交渉しなくては。
さくら様の仰られる通り、エルフ族が瘴気に弱いのなら、今は外交官を寄越すべきではない。
「ジタン様。もしこの者たちが翼族ではなく『さくら様を狙った』のでしたら、王城に攻撃が向けられていた可能性も御座います」
「なぜさくら様が狙われるのです?さくら様は『聖なる乙女』ではないのに」
「ですが『神の加護』を受けておられます。さくら様を手に入れられれば自分も加護を受けられると思う
もし『神の加護』を受けたいなら、さくら様を攻撃するべきではない。
実際に父たちは『礼を欠いた』ために『天罰』を受けている。
『神の怒り』に触れたエルハイゼン国は、厚い雲に覆われて陽がささなくなって3ヶ月が過ぎた。
このままでは
昨年が豊作だったため、国庫を開ければ今年は
しかし、来年も『神の怒り』が続くようなら・・・
「ジタン様。今は『先のこと』より『目の前の問題』を一つずつ片付けましょう」
「・・・そうですね」
まずは出来ることから。
『さくら様を見習う』
そう決めたのだから。
それでもダメなら、さくら様に叱られましょう。
きっと、さくら様は厳しくても良案を授けて下さるでしょうから。
「よく、さくらをあの2人に預けたのう」
背の低いドリトスに背を叩かれたが、それに関しては自分自身が一番驚いている。
あの翼族2人、ヨルクとヒナリは生まれた頃から知っている。
特にヒナリは
『ヒナリ』とは『守るべき娘』と言う意味だ。
ヨルクはヒナリの『比翼』としてヒナリと同日同時刻に生まれた。
翼族はよほどのことがない限り『2人一組』で行動をする。
翼族が子供が好きで、共に空を飛んで遊ぶことは知られている。
ただ大人たちからは『気まぐれ』な性格が災いして『飛んでる途中で落とされるのではないか』と誤解を受けてしまう。
翼族もそれを知っているから、子供以外には近付かない。
それは彼らも同じだ。
それなのに、ヨルクがさくらに興味を持ったらしく質問責めにしている。
「こんな所から見るより近くで見ようぜ」
「私もいます。族長様。よろしいでしょうか?」
珍しいことに、ヒナリまでさくらに興味を持っているようだ。
見上げてくるさくらの目が戸惑いと緊張とワクワク感を含ませている。
「・・・何かあればすぐ戻れ」
少し
ヨルクは大事そうにさくらを抱きかかえてすぐ、何かに気付いたような表情を見せた。
「行ってくるね」
嬉しそうに手を振るさくら。
その様子にヨルクは口を
そして子供たちを相手にしてる時みたいにすぐに飛び出さず、背中の羽根を少し動かして浮いてみせた。
「大丈夫か?怖くねーか?」
さくらが頷くと「なんかあれば言えよ」と言って屋上庭園から外へ出ていく。
「ヨルクにしては珍しく『紳士的』じゃのう」
ドリトスも驚きを隠さない。
それだけヨルクはさくらを気に入り、大切に思っているのだろう。
「さくらは彼らの『雛』になるやもしれんのう」
「『雛』に・・・ですか?」
「そうじゃ」
ドリトスは『雛』の存在を知っている。
一般的に雛は『守る相手』をさしている。
しかしドリトスのいう『雛』は違う。
『親鳥』を成長させる存在のことだ。
・・・現に彼らはさくらを『特別な存在』としてみている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。