第19話




「さて。今聞いた通り、私はここに留まる理由はないけど?貴方たちは私への礼を欠いてひと言の謝罪もなし。廊下で待ってる間も『彼女』は私に謝罪したのに。アンタらは『女神様』よりも上なんか?ずいぶんと偉いんだな」


相変わらず私をバカにしてるのか返事はなし。

そっぽ向いてるし。

やっぱり城から全力投球でポイッと投げ捨てるか?


『・・・それだけは止めて下さい』


こんな奴ら、まだ庇うの


『申し訳御座いません』



別にアリスティアラに謝ってほしくて言ってるんじゃないけどなー。



「ねえ。貴方たちって『女神様の神託』をバカにして信じなかったんでしょ?」


私の言葉にレイソルは目を背けた。

やっばりね。見下した態度を見てれば分かるわ。


「すごいわー。『最上位の女神様』の御言葉をバカに出来るなんて」


あ、その女神様って今まで目の前にいた人(?)ね。

私にはちゃんと姿が見えているんだけど、貴方たちは姿が見えた?

見えないよね。

見る気もなかったよね。

興味ないだろうから教える気もないけど。


もちろん紹介は不要だったよね。

バカにして見下して『御言葉』を軽視して存在を無視している『最上位の女神様』なんか、同じくバカにして見下している私から紹介なんかされても嬉しくないだろうし。

興味もない、信じてもいない『女神様』を紹介されたって迷惑だよねー。

もちろん『天罰』も怖くないよねー。

『信じてない』んだから天罰なんか『存在しない』よねー。

うんうん。存在しない天罰、その身に受けないといいね〜。


そう言ったら『おバカ3人組』の顔色は、真っ青から真っ白へと変わっていった。



「そうそう。さっきの会話、耳の穴を搔っ穿かっぽじってちゃんと聞いたわよね?私は『浄化の加減』が出来るの。この国一帯の浄化でも個人でもね」


私はドリトスとセルヴァンの二人に手を伸ばす。


「うおう!」


「・・・身体が軽い?空気が澄んでる?・・・瘴気が消えた?」


そう。論より証拠と言うでしょ?

だから、彼らの周りだけ瘴気の浄化をしてみた。

驚きの声に他の者たちが2人に駆け寄る。


「確かに手を触れただけで手に纏っていた瘴気が浄化された」


銀色のロングヘアをした『エルフ族』だ。

ちなみに男性。

胡散臭いという目で私を見てたヤツだ。


残念だね。

魔法に触れただけのアンタの手から瘴気が消えたのは一定時間だけ。

それも5分もしないで元に戻るよ。

連中が子供のように声を上げて喜んでいるから、教えないでいてあ・げ・る・わ。

あ〜。なんて優しい私。



エルフ族の男が「私にも浄化を」と近寄ってきたから、「ヤだね」と一刀両断。


即答したら、何故か3人組は固まった。

変だな。麻痺魔法をかけた覚えはないが。



「まだ分からん?自分たちが私に『どんな態度』を取ってたか気付いてないの?分かってないの?自覚してないの?バカなの?死ぬの?」


私をバカにして見下していたこと、気付かれていないとでも思ってた?

『胡散臭い』って目で見てたでしょ?

『人間なんか』って見下していたでしょ?

『気の流れ』でバレないと思ってた?


悪いね。私は『気配を読む』のが得意なんだよ。



そう言ったらレイソルと『エルハイゼン国宰相 マクニカ』『エルフ族の外交官 アストラム』の表情が引きつった。


「さて質問。自分を見下してバカにしてるヤツ相手に、身を削ってでも尽くしてやる必要があるんかい?」


さあ、答えてみろよ。

心が寛大で寛容なお前らなら、『そんな事当たり前だ』と言えるんだよな?


・・・黙ってねーで答えろよ!


「テメェがやらねーのに、人には強要するんか!」


怒鳴られても反論をしてこない。

ドリトスとセルヴァンはこちらを見て肩をすぼめた。



「あーあ。マジでアホらしい」


テーブルにゴトリと『乙女の魔石』を置く。


「サッサと金払いな」


払わないなら他国で売るぞ。

そう脅したら、マクニカが「失礼します」と言って魔石を手に取って魔力を流す。

真っ白で柔らかな光が部屋を包む。

すぐに慌てて魔石を丁寧にテーブルに置き、「失礼致しました!すぐご用意させて頂きます。いくつお譲り頂けますでしょうか?」と低姿勢になった。


「無理せず払えるだけ」


「ありがとう御座います。お部屋の支度は出来ております。そちらでお待ち頂けますでしょうか?」


「どのくらいかかる?」


「明日の午後にはご用意出来ます」


「じゃあ、明日ここに来るから」



魔石をメニュー画面からアイテムボックスに戻す。

そしてドアを呼び出したら、突然現れた鉄扉にポカーンと口を開けられた。



「明日、待っとるからの」


ドリトスがニコニコしながら手を振ってくれた。

セルヴァンも手と尻尾を振ってくれたから「うん。また明日ね~」と手を振って、ドアを潜ってマンションへ戻った。




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