第20話




「ほーんと『どうしようもない連中』だったわねー」


のほほんとハンドくんが淹れてくれた紅茶でのどを潤しながらため息を吐く。


「本当にごめんなさい」


アリスティアラは小さくなって謝罪する。

落ち込んでいるのは、エルハイゼン国に『降臨』しちゃったことを他の神々から注意されたからだろうけど。


べっつにアリスティアラのせいじゃないでしょーが」


「でも貴女に不快な思いをさせてしまったことに違いはないでしょう?」


それはそうだけどね。

アリスティアラ以外の男神おがみや女神たちからは「徹底的にやっていい」って言われたから、手を抜く気はないんだよね。


「今頃、神殿では『抗議殺到』に『苦情殺到』でパンク状態になってる頃でしょ?」


神官たちも可哀想に。

『神の怒り』のすべてを国王に持っていけるんかな~?


「『神の怒り』を揉み消して神々から罰を受けるくらいなら、全部国王たちに『丸投げ』した方が良いよね。国王たちが罰を受けて当然なんだもん」


私は出されたクッキーを口に運びながら、テーブルに置いたタブレットを弄ってる。

神々は相変わらず姿は見せてくれないけど、メールやチャットが面白いのか色々と送ってくれる。


そんな彼らが、さっきから『抗議終了』報告をチャットで送ってきてくれる。


「あらあら。『この方』まで抗議してきたのね」


アリスティアラが、届いた最新の抗議終了メールに目を丸くする。

偉い人?凄い人?珍しい人?


「そうね。『偉くて凄くて珍しい人』って所かしら」


ああ。『創造神』か。と呟いたら「何で分かったの!」と驚かれた。

いやいや。アリスティアラ自体がこの世界では『最上位の女神』。

それも『第二位』だったよね。

その女神が『偉い』って言うんだから・・・


アワアワーって慌てるアリスティアラに笑っているとチャットが届いた。

『正解』


・・・何ともフレンドリーな創造神様です。





そういえば「創造主って『意識』なの?それとも『神様』?」と聞いたことがある。

回答は『創造主=創造神』だそうだ。

つまり『この世界の最上位の神様』らしい。


っていうか、勝手にチャットを登録されているのは良い。

だけど「そんな簡単に神様の名前を出しちゃっていいのー?」

みんながチャットに登録してるのって真名まなでしょ?

真名を知られたら『使役される』って言うじゃん!


私だって、イレギュラーな存在で特殊能力を使う。

その能力を悪用されるのを避けるためと『元の世界の自分の名前』を大事にしたいから『この世界の名前』を付けた。

この世界の神様だって真名は大事なんじゃないのか?

と言いつつ、私はアリスティアラを名前で呼んでるが。


「貴女は私たちの名前を知っても悪用しないでしょう?」


クスクスと笑う女神様に「まあね」と答える。

今の『心地よい関係』を壊したくないからね。


『我々が世界で知られている名はあざなで真名ではない』


でも私のチャットに登録された名前は・・・


『真名ですが?』

『貴女は知っても人前で口にしないでしょう?』

『先ほども、あの者たちの前では『女神様』と呼んで名前を伏せてくださいましたよね』


じゃあ口に出す必要が出たら、失礼かもしれないけど愛称で呼ばせてもらおう。


『どんな愛称で呼ばれるか楽しみにしてるわ』


・・・本当に楽しそうですね、皆さん。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る