第14話




「私が死んだらハンドくんたちはどうなるの?」と聞いたら、他の召喚獣や召喚生物たち同様『魔法世界』で生きていき死んでいくらしい。

そして創造主は生まれた召喚獣や召喚生物が悪用されないために『召喚条件』を設けることが出来るそうだ。

ハンドくんたちには「悪い人のいうこと聞いちゃダメだよ」と伝えたら「はーい!」って感じでピョーンと手のひらを見せた。

その姿が可愛くて、私もアリスティアラも笑ってしまった。



右手ハンドくんからは『勝手に仲間を増やしたこと』を謝罪された。

創造主の私に許しもなく仲間を増やすのは『全種族が消滅させられても文句は言えない』そうだ。


「ゴメンね。召喚だと気付かなくて。一人ぼっちは淋しいよね。これからも仲間や家族を増やして良いよ。だから私がんだら、助けに来てね。喚んでなくても来て良いからね」


私の言葉にハンドくんたちはハイタッチして、私の両手をペチペチと叩いて喜んでくれた。


いい子たちで、マンションの部屋へ現れては私の世話を焼いてくれる。

でも生活のジャマはしなかった。

私がごはんを作ってたらそれを覚えたらしく、今では料理を作ってくれたり部屋や風呂の掃除をしてくれるようになった。


一応ハンドくんたちはルールを作っているらしく、日常生活の手伝いに来るのは左右一対のみ。

最初のハンドくんは『一族の長』となり左手のハンドくんが補佐役で二人(?)は白手袋をしてる。

これは『私が分かるように』というハンドくんたちの配慮。


そして私から生まれたためか『してほしいこと』は口にしなくても分かってくれる。

一応『痛めつけても良いけど殺しちゃダメ』と約束している。



さてハンドくんたちが大理石みたいな床に顔面を叩きつけた兵士はピクリとも動かない。

もう一人の兵士は、私が歩を進め始めたら「ひぎゃあ!」とおかしな声を上げてブルブル震えだしたが逃げ去ることはなかった。

足が動かなくて逃げられなかっただけかもしれない。



「何を騒いでいる」


重厚な扉が開き中から150cm位のおじさんが出てきた。

見た目からドワーフだろう。


『ドワーフ族の長の一人です。『鑑定』がオート設定になってませんよ』


アリスティアラからチャットが届いた。

マンションにはアリスティアラとハンドくんしか来る相手がいないのに、鑑定をオートにしてたから現れる度に何度も表示されて鬱陶しいからオフにしてたんだった。

こちらへくる前に鑑定をオートにするのを忘れていたため、アリスティアラにお礼を言ってオート設定にしたら表示が出た。


種族:ドワーフ族

職種:ドワーフ族 部族長

名前:ドリトス

年齢:184

レベル:21


スキルとかも表示されていたが、石工や木工、鍛治など『ドワーフ』らしいものが多かった。


「オイオイ。アンタが『女神に愛されし娘っこ』か」


ニコニコした好々爺が近付いて来ようとしたが、私の前に突然現れたハンドくんたちが『ストップ』という感じでドリトスの動きを止めた。

右手のハンドくんが床に倒れた兵士を指さすと、そのまま自分の左側に目をやり大きく嘆息した。



ドリトスの後ろから「女神に愛された娘だと!」など聞こえてドタバタと物音がしたが、ドリトスは「ちょっと待っててくれるかい?」と私に笑顔を向け、頷いた私に「すぐに終わらせるからな」と言って扉を閉めた。


『盗み聞き』と思ったら部屋の中の声がバッチリ聞こえるようになった。

まあ「私に会わせろ」的なことを口々に言ってるオッサン連中と「じゃかあしい!落ち着かんか!」と怒鳴る声。

怒鳴ったのはドリトスだろう。


ドリトスは兵士たちの様子をひと目見ただけで『何があったか』を正しく判断していた。

さすが『ドワーフ族の長の一人』の肩書きは伊達ではない。


「知らぬとはいえ『無礼』を働いたのは間違いない。少なくとも『女神に愛されし娘』が3日後に来られると『御告げ』があっただろう!それなのに召喚部屋に誰も配置せず、この部屋の前でも礼を欠いた態度を取っておったようだ。それなのに『会わせろ』とは何事じゃ」


おお!静かになった。

なんか小声でモゴモゴと言ってるな。ドリトスには聞こえてないのかな?



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