第8話




「な~んもないねぇ」


見渡す限り荒野のド真ん中。

地平線に凸凹と見えるのは山。

ここは上から見るとクレーターみたいになっているらしい。

なんでこんな所に居るのかというと・・・


「この島はアリステイドの端にあります」


そのため瘴気が一番弱いらしく、今の私が無理せずに身体を慣らす事が出来るそうだ。

そして島の周囲には『結界』を張ってあるので、魔法でドッカンバッタン暴れても騒いでも、周りに迷惑はかからないらしい。

さすが長い間覗きをしてただけあって、私の性格が分かってらっしゃる。


「誤解を与えるような言い方をしないで下さい」


本当のことでしょ?

それとも『ストーカー』って言った方が良かった?


「・・・・・・・・。まずメニューの使い方から」


あ!話、逸らした。


「はーなし~、そらさなーいで~」って歌ったら「そこは『瞳』だったと思いますが?」とツッコミを入れられた。

2番は『話』なんだよ〜。

っていうか、なぜこの曲を知っている?


「ひーとみ〜、そらさなーいで〜」


目をそらしたから、折角だから1番を歌ってあげたら顔が真っ赤になってたよ。



「では話を戻します。メニュー画面を表示させたい時は、思い浮かべるだけで開くことが出来ます」


フムフム 。では『開け、メニュー!』。

アラビアンナイトの呪文をモジって思い浮かべたら、先日と同じ様にポンとメニュー画面が現れた。

この前見た時よりメニューが増えてる!?


「無事に開きましたね。この画面は他の方には見えていません」


だからメニューが増えてるって!


「メニュー画面は指で操作出来ますが、メニューを思い浮かべるだけで開きます」


あ。スルーしたよ、このねーちゃん。

取り敢えず、『ステータス』と心の中で呟いたらゲームで見かけるステータス画面が表示された。


私は『レベル1』で、『体力』や『魔力』『攻撃力』に『防御力』『精神力』などの表示はすべて10しかなかった。

名前の欄は空白になっている。

そして私の年齢は『18歳』だった。

ずいぶんと若返ったもんだ。


「この画面を閉じる時は?」


『終わり』や『終了』などと思うだけでメニュー画面に戻ることが出来るらしい。

試しに『閉まれ、ゴマ!』と思ったらステータス画面からメニュー画面に切り替わった。





「では次に移っても良いですか?」と言われて思わず「ダメ」と言ってしまった。

なんか気持ち悪い。

そう言うとアリスティアラは私をジッと見つめて「だいぶおりが溜まっていますね」と言われた。

澱が溜まると、こんな風になるのか・・・


ここで急遽、澱を魔石に変換する方法を教えてもらう事になった。

地面に直接座り、胡座をかいて目を閉じる。

精神統一をするように、両手を合わせて気を込めると掌が熱くなる。

するとすぐに何か硬い物が手の中に現れた。

目を開けて手を開くと、こぶし大のピンク色をした正二十面体の水晶がコロンと出てきた。

組んだ足の中にも同じ水晶がコロンコロンと落ちている。


「おおー!これが『乙女の魔石』かー!」


キレイじゃん!と喜んでいたら、『キレイなお顔の女神様』が「ハァァァァァァァ」って大きなため息を吐いてへたり込んだ。

どうやら歴代の『聖なる乙女』たちは『魔石の精製』は一度に一つしか出来なかったらしい。

私が一度に作り出した魔石は5個。

それも『最上級』だそうで1個800万円はイケるようだ。


うん。なんかゴメン。



大量の魔石を一つずつアイテムボックスに入れるのが面倒くさい。

そう思っていたら、アイテムボックスの設定で『自動収納』というのがあった。

魔物を倒した時に出る『ドロップアイテム』を、自動でアイテムボックスに収納してくれるらしい。

今みたいに魔石を精製した時も自動で魔石をアイテムボックスに収納するので、人前で手を合わせて精製しても気付かれないようだ。


『有効化』に設定して魔石を一つ手にした状態でアイテムボックス化させたウエストポーチに触れる。

『乙女の魔石をすべてアイテムボックスに入れますか?』と表示が現れたので『はーい』と心の中で返事をする。

瞬時に魔石がすべてアイテムボックスに収納された。

それと同時に、メニュー画面の下に『乙女の魔石23,352個を収納しました』と表示が出た。


そんなにあったんかい(笑)



アイテムボックスを開くと『貴重品(1)』となっていた。

開いてみると『乙女の魔石 23,352個』の表示。

ふーん。私が作る魔石は『貴重品』なんだ。

あまりにも多くて自覚ないけど。


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