第7話




自活するのに便利だと思ったら『乙女の館』があり、歴代の乙女たちはそこで生活していたらしい。

「私『乙女』じゃないじゃん」と言ったら、エルハイゼン国の神官に私を乙女と同等に接するよう『神託』を送るらしい。


それって公私混同じゃないか?



そしてメニュー画面に『問い合わせ』を作ってもらった。

というのも、アリスティアラに直接なにか聞きたい、知りたいって時は、わざわざマンションまで戻らないといけないらしい。


アリスティアラを含めた『神様』は、アリステイドの人々に姿を見せることが出来ない。

神官でも見えるかどうか分からない。

声は一部の神気の高い神官にだけ聞こえるらしい。


それなのに普通に会って話をしていては、神官連中にいいように使われてしまう。

神殿に行かない神官も出てくるだろう。

逆に神官という立場が軽視される可能性すらある。

そのため、『チャット』でやり取りをする事になった。






一通り説明が終わると、アリスティアラは真顔になった。


「一つだけ。お願いしたいことがあります」


私の肉体を若返らせたい。と言うのだ。

元の世界に適応した私の体細胞を、アリステイドの環境に合わせるためにどうしても必要なことらしい。

アリステイドの環境でも生活出来る身体を持っていることが乙女に選ばれる一番の条件だが、私はイレギュラー。

このままアリステイドに入れば数日で死を迎えるらしい。


それは全力でお断りします。


私がマンションの最上階ごと飛ばされたのもそれが一番の理由らしい。

そしてこのマンションへ自由に行き来が出来るようにしたのも、何時でも戻って休めるようにという配慮から。

このマンションは元の世界と唯一繋がっている。

アリステイドの空気では、私は体調を崩しやすい。

もちろん『その場にいるだけ』で周りの空気を浄化するが、それですら身体に負担がかかる。


「完全に身体が馴染むまでは、無理をしないでここへ戻って来て頂きたいのです」


身体が馴染んでも無理をしてほしくありませんが・・・

そう言われたが、私自身も無理して寝込みたくありません。

用がなければ、ここで引きこもっていたい位です。

でもこの先何十年もダラダラ生きていくよりは『異世界観光』を楽しむのも良いだろう。

飽きたら部屋に引きこもって、趣味のジグソーパズルを作っていればいい。

今まで仕事が忙しくて作る時間も出来なかったが、これからは時間を気にせずに作れるんだ。


ふと思い出してメニュー画面を確認する。

『ステータス』画面をタップすると『名前』や『職業』の他に『HP』『MP』『レベル』『スキル』など、ゲームでお馴染みの単語がズラズラと出てきた。


「この世界はゲームですかねぇ?」


そう呟いたら目線を逸らされたよ。

無言で見ていたら『蛇に睨まれた蛙』のように固まるし。


「貴女をお送りする大陸は、イザコザはありますが比較的平和なので安心して下さい」


「スキルって~。(攻撃)魔法とかー。(回復)魔法とかー。(補助)魔法とかー」


指を折りながら数えだしたら


「魔法の使い方は後日お教えします。今は新しい世界に身体を慣らす事から始めますから。今日はこの部屋に寝具を用意しますのでここでお休み下さい」


アリスティアラのその言葉を聞くと同時に、私は深い眠りに落ちた。



私に愚痴や反論の余地はないのだろうか。




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