第2話
「この有り様を包み隠さず。すべてをお話し下さい」
入居者さんの入っていない部屋の鍵を開けてもらい、そこに私たち二人はいま向かい合って座っている。
ダイニングテーブルセットは女性が出した。
私としては床に直接座っても構わなかったが、口癖なのか「それでは申し訳ない」との事。
別にラグを出してくれれば良かったんだけどね。
そしてこれまた取り出されたティーセットには香り豊かなお茶が注がれていた。
カミツレに似た香りを楽しみ、ひとくち口に含む。
味もカミツレのハーブティーと変わらない。
リラックス効果があるようだ。
「はぁ…」と深く息を吐いて、真っ直ぐ正面の女性を見る。
少しの間、沈黙が続く。
重い口を開いたのは女性だった。
「貴女がこの世界に来てしまったのは、
女性の話を纏めると、私はこの女性・・・今いる世界の『最上位の女神様』だそうだ・・・から一方的に好かれてしまったらしい。
そして他世界の神々に好かれた人間は、直接干渉されなくても大なり小なりの『加護』を受けてしまうらしい。
私の世界ではその加護を良しとしないらしく、加護を受けた者は世界から弾き出されてしまうそうだ。
私の場合、住んでいたマンションが最上階ということで、フロアごと異世界に飛ばされてしまったらしい。
「ねえ。あの時同じ階に隣人とかいたけど。彼らはどうなったの?」
女性=女神『アリスティアラ』とやらは私の問いに表情を強ばらせた。
「ああ。消されたんか」そう呟くと小さな声で「はい」と言われた。
「でも彼らはあの世界で再び生を受ける事が出来ます」
私が死んだら?そう問うたら「すみません。分からないです」と返事された。
今まで加護を与えてこの世界へ迎えたことはないらしい。
「ですが『この世界へ召喚された』方たちは、亡くなられた時に「帰りたい」と強く願って元の世界で新たな生を受けた方もいます」
ちょい待て!
『召喚』ってなんだ!
今までもこの世界に喚ばれた人達がいたのか!?
私のように『召喚以外』でこの世界に来た人はいないらしい。
「ですが、この世界は貴女の世界から『聖なる乙女』が世界の浄化のために召喚されます」
そして私たちの世界で『神隠し』と呼ばれる現象は、
私たちの世界の人間は、アリスティアラの世界『アリステイド』の世界の空気を浄化するチカラを持っているらしい。
アリステイドの空気を吸って吐く。
それだけで浄化されるらしい。
私らは光合成をする樹木か?
しかし浄化を続けていると『
「体内に蓄積された澱は、両手を合わせて気を込めるだけで、掌から最高品質の魔石として排出されます。『乙女の魔石』は精度が高く高額で取引されます」
そして私は体内の気を外へ向けるだけで広範囲を浄化するチカラをも持ち合わせているそうだ。
でもそれをすると体力が一気に減って疲れるから止めた方が良いと止められた。
どうせ放っておいても呼吸すれば周囲を浄化するのだから、わざわざ疲れることをする必要もないだろう。
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