Phase05 始動

 それからしばらくして、お姉ちゃんが娼館からいなくなった。

 どこかのお金持ちに買われてしまったらしい。


 ミチルは寂しくて、また涙を流した。でも、お金持ちの家で幸せに暮らしているのなら、そのほうが良いと、自分に言い聞かせた。

 しかし、あるとき、娼館の主人が、

「カスミに懐いていたガキだな。お前、殺し屋をしてるんだったよな?」

 カスミは、お姉ちゃんの名前だ。

「依頼があるんだが、受けてくれるか?」

「依頼って殺しの?」

「ああ、カスミを買った男を殺して欲しい」

「どうして、そんな!」

「すっかり騙された。一等地にオフィスを持っていると言うから、電子通貨スカイマネーでの取引に応じたが、不渡りを出されたんだ」

「どういうこと?」

「会社は火の車で、ほとんど文無しだとさ。うわさじゃ、心中するつもりでカスミを買ったらしい」

「お姉ちゃんと一緒に死ぬってこと?」

「そのまえに、奴を殺して、カスミを連れ帰って欲しいんだ。報酬は十万でどうだ?」

 たった十万……。でも、お姉ちゃんのことを聞かされたら、断るわけにはいかない。

 ミチルは依頼を引き受けた。

 手付金としてもらった一割で、武器を買い、ターゲットのオフィスに忍び込んだ。

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