第六話 クレーターを越えて

 クレーターを越えるために歩き始めて三時間。ようやく円周の半分まで来た。


「もう疲れた。休憩しようよ」


「何言ってんだ。さっき休んだばっかだろ」


 マサがうつむきながら弱音を吐く。しかし、コジローが言った通り十分前に休憩したばかりで、そんなに休んでばかりいたらゴミ山天国に到着する時間がどんどん遅くなってしまう。


 現在、太陽はちょうど真上にあり、時刻が昼過ぎであることを示していた。


 しかし、朝の空とは打って変わり雨雲がちらほら見える。


「雨が降りそうだな」


「ついてねぇな。最近は全然降らなかったくせに」


 雨に当たれば体は冷えるし、地面は泥になって歩きにくくなる。飲み水としては助かるが、今降られると困る。


「ちょっと急ごう」


 マサには酷ではあるが、私たちは足を早めた。




######




 さらに三時間が経った。


 歩く速度を早めたことで何とか雨が降る前に、クレーターを越えることができた。


 時刻はおそらく夕暮れ時だと思う。空は雨雲に覆われており、確かな時刻を確かめようがない。


「もうダメ、歩けない」


 マサが座り込んだ。


 現在、私たちはクレーターを越えて、さらにその先にある崩れた建物に入っていた。


 とりあえずはここで休憩することにした。仮に野宿することになってもここなら十分雨風をしのげる。


 そして、ちょうど雨が降り始めた。本降りである。


「コジロー、ゴミ山天国ってどの辺なの?」


 クレーターを越えたからにはゴミ山天国はもう近いはずである。


「旅人はクレーターから一時間くらいって言ってたから、ここから四十分ってところだろ。まっすぐ西へ向かえばあるらしいぜ」


 ということならば、かなり近くまで来たことになる。


 もうすぐカルクDXのパーツが手に入る、そう思うと体の疲れが吹き飛んだ。ここまで歩いてきたかいがあったというものだ。


「雨が止んだら出発しよう!」


 私は興奮しながら雨が早くやむことを祈った。


「雨がやむ頃にはもう夜だぞ。明日にした方がいい」


 心配性のタケ兄はそんな事を言うが、目の前にお宝があるといのに待っていられるものか。


「大丈夫、セキュリティロボットには慣れてるから」


 私は村の近くにあるゴミ山に何度と足を運んできた。ヤンロボやブンブンと遭遇した回数は数えきれないが、けがをしたことは一度もない。


「まあ、何かあれば逃げればいいからな。タケオもそんなに心配すんなって」


 コジローもゴミ山天国にワクワクしているらしく、私の意見に賛同した。


 マサは大分疲れていたようで寝息を立てている。


「本当に気をつけろよ、死んだら終わりだからな」


 タケ兄は真剣な顔で私を見た。


 雨はまだやみそうにない。






## 続く

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る