第四話 旅人の話
ブンブンの飛行する音が私たちのいる建物の上を横切る。まだまだここから立ち去ってはくれないようだ。
「そう言えば、コジローはどうやってゴミ山天国の事知ったの? ゼン
ゴミ山天国の話はコジローから聞いた。コジローはどこからその話を聞いたのだろうか。
「いや、ゼン爺じゃないぜ。もしゼン爺が知っていたら、もっと早く教えてくれるだろ」
ゼン爺は村で一番の長生きで、いろんな事を知っている。ロボットやコンピューターの作り方もゼン爺から教わった。
「じゃあ、どうやって知ったのさ?」
「この前、西から旅人がやって来たんだよ。急いでたようで、少し休んだらすぐに出発しちまったけどな。ほら、お前がマサとヤンロボを運んでた時だ」
「旅人!」
旅人などめったにやって来るものではない。私もおもしろい話を聞きたかった。
「何で教えてくれなかったのよ?」
「教えようとしたけど、そもそもお前はその時いなかったじゃねぇか。後で話そうにもお前はヤンロボに夢中で話を聞かねぇしな」
そう言われると、私が悪い気がしてきた。せっかくのチャンスを失った後悔の念は大きい。
「それで旅人からは、ゴミ山天国以外にどんな話聞いたの?」
「それがよ、驚くぜ。ゴミ山天国から、さらにはるか西の方に行くとな、正常に機能しているロボットが管理を続けてる街が残ってるらしい」
「ロボットが管理している街って、食料とか電気とか生活に必要なものをロボットが自動で生産してくれるってこと?」
それはゼン爺から聞いた話だ。人間の文明が戦争で滅ぶ前の時代、人間の生活はロボットが支えていたという。人間の生活に必要なものは全てロボットが作り、管理してくれるのだ。
「そうだ。人間は遊んで暮らしているだけでいい。まるで夢の街だな」
私はロボットに囲まれた生活を想像した。
ブンブンやヤンロボみたいなセキュリティロボットではなく、ゼン爺が話してくれたロボットたちだ。
部屋を掃除してくれるロボット、料理をしてくれるロボット、服を洗濯をしてタンスにしまってくれるロボット。道案内をしてくれたり、危険から守ってくれたり、分からないことを教えてくれるロボット。
私が作っているカルクDXは、ゼン爺から聞いたロボットたちの言わば集合体である。
「そんな街で暮らしてみたいな」
私がそう呟くと、コジローが少し残念そうに答えた。
「だけどな、その街に人間はもういないらしい。旅人がその街に到着した時点で誰もいなかったらしくてな。その旅人も一日休んだらすぐに出発したと言ってた」
「だけど、人間は住めるんでしょ? 私たちの村のみんなで移住できないかな?」
「旅人が言うには、その街まではここから歩いて三ヶ月以上かかるらしい。それに具体的な場所も分からないからな。自動車かなんかあれば行けるかもしれんが、現状では村のみんなで移住するのは現実的じゃあねぇよな」
コジローは窓から空を見上げながら言った。
ブンブンの飛行する音は、まだ鳴り響いている。
## 続く
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