第三話 ブンブン

 ゴミ山天国に向けて、砂漠の上を歩き続けること一時間半。


 私たち四人は、大きな建物が並ぶ地域に足を踏み入れていた。


 建物が並ぶと言っても、そのほとんどが傾いていたり、半壊していたり、倒れかけていたりしている。人がいなくなってもう何百年も経っているのだろう。


「ちょうどいいし、ここらへんで一度休むか」


 タケ兄がそう提案すると、マサがすぐに「そうしよう」と答えた。


 マサは体が大きい割に体力がない。


「じゃあ、あそこの背が高い建物で休憩ね。三十分くらいゆっくりしていこう」


 私は比較的丈夫そうな建物を指差す。


 みんなでその建物に向かった。


 中に入ると、辺り一面に砂が積もっている。ただただ広い空間があるだけで、椅子もなければ机もない。


 私たちは砂まみれになることを気にすることなく、地べたに腰をおろした。


 タケ兄から水筒を一本もらって喉を潤す。運動後の水分補給は格別においしい。


「この辺は久しぶりに来たけど、特に変わったところもないな。何にもないままだ」


 タケ兄が周りを見ながら口を開いた。


 確かにこの辺りはずっと砂漠が広がっており、まともに植物も生えない。この大きな建物たちも形を変えずにずっとここにある。


 タケ兄の言葉に対して、「そうだね」と答えようとしたところで、遠くから連続した機械音が聞こえてきた。


 それはプロペラが回る音のようであり、徐々に近づいている。


「ブンブンが来る!」


 私はいち早くその事に気がついた。その後遅れて、他のみんなも気づく。


「まじかよ。当分外には出られなくなっちまった」


 コジローが舌打ちをした。


 ブンブンとは飛行型のセキュリティロボットである。八つあるプロペラを「ブンブン」回して飛んでいるため、そのまま『ブンブン』とみんなは呼んでいる。


 ブンブンは一区画を入念に探索する習性があるため、今外に出ると見つかってしまう可能性が高い。


 何より恐ろしいことは、ブンブンは生物を必ず敵と認識してしまうことである。一度見つかってしまえば、どこまでも追いかけてきて、最後には撃ち殺される。


 幸い、建物の中にいれば見つかる可能性はない。


「最近はブンブンも見かけなくなって平和だと思ってたのに、この仕打ちはないぜ」


 コジローが文句をぐちぐち言い始めた。


 マサは端の方で小さく震えており、それをタケ兄が慰めている。

 私たちの両親とマサの父親は二年前にブンブンに殺された。食料を探しに行く途中のことだった。


 マサが怖がるのも無理はない。私は宝探しの時に何度もブンブンを見てきたので、慣れてしまった。タケ兄は怖がった素振そぶりを見せないが内心は分からない。


 重苦しい雰囲気が続いた。


 こんなときはおしゃべりでもしよう。






## 続く

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