第118話 リーフの迷い

メリッサと別れ山賊のアジトに帰ってから、シャルルは、激しく落ち込むリーフの肩を優しく抱いてずっと慰めてくれた。


「困ったね、リーフちゃん。」とても優しい声で。


ヒューはただ面倒くさそうに頭を掻いた。

「まったく、女ってのは厄介だな・・・。ただ男の抱かれるだけなのに、何をそんなに考えることがあるんだ。世界が終わってもいいのか?」


「ヒュー!」

たしなめるようにシャルルが睨む。ヒューは肩をすくめた。


「女の子にとってとても大切なことだよね・・・。でも他に方法はないも同然だから・・・。僕もその相手の一人だなんて、ごめんね、リーフちゃん。

こんな顔の僕じゃあ、怖いんじゃないかい?」

シャルルは顔の右半分のやけどの跡を押さえた。

「そんなことないよ、シャルルさんはとっても綺麗だよ!それにとても優しいし、ボクにはもったいないぐらいの人だよ・・・!」

そうだそうだとばかりにヒューがうなづく。


「とにかく・・・、あの、ごめんなさい、一晩考えさせてください・・・。まだ頭が混乱してて・・・。」

「そうだね、そうしようね。今日は休むといいよ・・。」

シャルルは頭も体もふらふらのリーフを小さな部屋に案内してくれた。





一方、どこかの宿屋にいるアーサー王子。

ベッドの上、すぐ横には裸の女が眠っている。

アーサーは、窓から空を見ていた。


「あんた、ずっと空を見てるね。やってる最中もさ・・・一晩中見てるでしょ」

「違うよ。


一日中だ。」


アーサーはニッと笑う。


その時、明け方の空に一筋の煙が上がった。

アーサーは飛び起きて服を着、旅支度を始める。


「今から出発するのかい?」

女が驚いた。

「愛しい女が待っているからね。」

アーサーはお金だけ残して朝焼けの町に消えた。



小さな部屋の小さなベッドに突っ伏すリーフ。

(考え過ぎて頭が痛くなっちゃった・・・。)

分からない期末テストを前に途方に暮れている気分、よりもっと最悪で・・・。頭痛薬があればな、と思う。


シーツに潜って猫のように丸まっていると、それでも少しは落ち着いた。

このシーツから出たら、実は夢でした、とかいうオチはないだろうか・・・。


カチャリ、と扉が開く音がした。リーフがシーツから顔を出すと、そこに立っていたのはヒューだった。

「あの・・・なにか・・?」

ヒューは何も答えず、ツカツカとリーフのベッドに近寄ってくる。

「シャルルに抱かれるのが嫌なのか?」

「嫌ってことじゃなくて・・・ボクはその・・・」

「早くケリをつけろ!そしてどこかに行ってくれ!でないとあいつは・・・!さっきシャルルはナイフを持って部屋に入って行った。おかしいと思って問い詰めると、シャルルは自分の顔から赤のドラゴンの欠片をえぐり出すつもりだったんだ!」

「そんな!」

「お前がかわいそうだと言ってな。このままでは、そのうちあいつは本当にやってしまうだろう。その前に・・・。」

「ごめんなさい、ごめんなさい・・・」

リーフは謝ることしかできなかった。

「・・・初めてだから躊躇しているんだとしたら、オレがその迷いを取り去ってやろう・・・!」

ヒューはリーフをシーツの中から引きずり出した。

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