第116話 予言者メリッサ
裸だったリーフは、金の刺繍の入った赤いドレスを着せてもらった。
(ヒューさんは山賊なんだから・・・これも誰かからか盗んだものなのかな・・・)と思うと微妙な心境だったが。
「やあ可愛いね、リーフちゃん。赤がとても似合うよ」
ドレス姿のリーフを見てシャルルはニコッとした。
(そう言えば最近、ドレスを着るのに抵抗がなくなってきたなぁ。)
ちょっと不安になるリーフ。
ヒューは、シャルルとリーフを連れて細い通路に入った。
岩肌の暗くて冷たいトンネルのような道を5分ほど歩く。その終点には岩の扉があり、そこを開けると小さな小部屋になっていて、3つ木の扉があった。そのうちの一つを開けると、そこは剣や盾、斧がたくさん置いてある倉庫みたいなところだった。
その倉庫の扉をさらに開くと、また通路があり、その先の扉を開けると・・・。
突然騒がしい音が聞こえてくる。
カンカン、ゴンゴン、ジュー、という鉄を叩く音。
男たちの大きな声。
ここは鍛冶屋の工房の中のようだ。
あけ放たれた店の前の通りを行きかう人たちの賑やかなおしゃべり。
いつの間にかどこかの村に来ていた。
「ここは?」
「山の上の村、ドゴールだ。」ヒューはぶっきらぼうに答える。
「久しぶりの村だろう。シャルル、大丈夫か?」そのくせシャルルにはものすごく優しく、気を使っている。
「大丈夫ですよ。さあ、行きましょう。」
鍛冶屋の男たちはヒューたちをちょっと見ただけで、構うことなく仕事を続けている。
鍛冶屋を出て村の裏道を通り、家が少ない集落まで歩く。
周りには果物の木がたくさん植えてあった。
「ドゴール村は、昔ヒョウガの国の要塞として作られたんだよ。山の上からツバサの国やその他攻めてくる敵を監視していたんだ。今では別のルートが開発されたために要塞としての機能はしてないけどね。
まあおかげで皆は平和に暮らしているよ。だけどこの村の人々は屈強な戦士の子孫なんだ。ヒューみたいにね。」
シャルルが戸惑ってばかりのリーフに解説してくれた。
そうしているうちに、一軒の可愛い家の前に着いた。小さいが住み心地の良さそうな、暖かい色のレンガで作った平屋。敷地を取り囲む白い塀の中には、果物の木が数本と小さい畑まである。ニワトリの鳴き声もする。
小さな煙突から白い煙が上がっていた。
シャルルが塀の中に入っていくと、小さくて丸いおばさんが家の扉を開けた。
「シャルル、久しぶりだねぇ、待ってたよ。もちろん、今日あんたが来ることは分かってたからね。
今パンも焼けたしスープも出来たところさ・・・あたしゃ預言者で良かったよ!
さあさあ、ヒューも黒髪のお嬢ちゃんもお入り。」
(想像と違うなぁ)魔女みたいな預言者を想像していたリーフは、普通の田舎の気の良いおばちゃんが出てきたことにびっくりした。
「あたしはメリッサ。さあ、まずは腹ごしらえでもしてくつろいでおくれ。」
預言者メリッサはリーフたちを暖かく迎え入れてくれた。
その匂いの通り、メリッサが用意してくれたパンとスープは絶品だった。
お腹が落ち着くと心も落ち着く。
リーフが夢中で食べている間に、シャルルがメリッサに一通りこの状況とリーフから聞いたことを説明した。
「メリッサにはお見通しだろうけどね。」と付け加えて。
「いやいや、あたしはしがない預言者だよ、ちょいちょいは見えるが、詳しくは分からないよ。
それにしても、この小さなお嬢ちゃん・・・リーフちゃんが、その体を使って赤のドラゴンの欠片を集めなければいけないなんてねぇ。大変な重荷だよ。あたしもそこまでは見えなかったねぇ。」
リーフのスープを飲む手が止まる。そのことを考えると胃が重~くなるのだ。
「あの・・・、メリッサさん、他の方法ってありませんか?その・・男の人と・・する以外の。」
メリッサは気の毒そうにリーフを見て、棚から小さな袋を取り出した。
「触っちゃいけないよ」と言いながら、袋の中身をテーブルに出す。
それは色とりどりの宝石だった。
メリッサが宝石を混ぜたり並べたりしていると、青い宝石と紫の宝石が光りだした。
「う~ん、あるにはあるみたいだけどね、二つほど。一つはリーフちゃんも知っているんだろう、赤のドラゴンの欠片を宿す男たちを殺して取り出す、という方法。・・・これは無理だろうね、優しいお嬢ちゃんには。もう一つは・・・」
「もう一つは?」ゴクリと息をのむ。
「見えないんだ。何かが邪魔をしている。ただ・・・。果てしなく不可能である、って感じだね。
それならまだ、男たちを皆殺しの方が可能性がある。」
「ええっ・・・」リーフは肩を落とした。
ここにいる、今まであった中で一番細くて力がなさそうな片目のシャルルでさえ倒せそうにない。
そもそも守護神のごとく山賊のボス、ヒューが張り付いているし・・・。
ましてや大剣士アーサー、魔法使いマーリン、ララ、王者ブルー、シロクマのベイド、忍者みたいなサスケ・・・という神に選ばれたようなメンバーが相手なのだ。
「それでも、ボクは探します・・。他の方法を・・・。」
メリッサは気の毒そうにリーフを見た。
「そうだろう、そうしたいだろうねぇ。生娘のあんたには残酷な方法だよ。だけど、リーフちゃん、残念ながら時間がないんだ。本当に可哀想だけど、早く全員の男たちと結ばれて赤のドラゴンを復活させるしかない。
それさえもすでに間に合うかどうか。黒のドラゴンの復活は目前なんだよ。」
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