第115話 シャルル

白い髪の美しい男は、リーフを見てにこりと笑った。

「こんにちは、初めまして。ヒュー、可愛らしい女の子を連れてきたね。

でも、服くらい着せてあげたら?」

そう言って自分が羽織っていたショールのようなものをリーフにかけてくれた。


「あ・・・ありがとうございます」

(男の人なんだ・・・)ものすごく落ち着いた優しい声。ただ、顔の半分が髪で隠れていて、ちょっと不思議な感じがした。


「きみ、お名前は?」先生が子供に問いかけるようなしゃべり方だ。


「リーフっていいます・・・。」

「そう、リーフちゃんか。ボクはシャルルっていいます。よろしくね。」


リーフがなんと言っていいのかわからなくて困っていた時、滝の方から強い風が吹いた。

その風はシャルルの長い髪の毛を揺らす。

すると、隠れていた顔の半分があらわになった。


「!!」

その顔の半分を見てびっくりするリーフ。なるべく表情には出さないようにしたのだが・・・。

なぜなら、シャルルの顔の半分が酷いやけを負っていたから。

右目も火傷で塞がっていた。


「ああ・・・、驚いた?」

リーフは頭をブンブンふった。


「そ、それぐらいでは驚きません!」

半分本音である。

シャルルはふふっと笑う。


「それより、シャルルこれを見てくれ!」

山賊のボス、ヒューは、せっかくかけてくれたシャルルのショールをめくりあげてルーフの太ももをあらわにした。とっさにショールを押さえるリーフ。


「これは・・・!」

シャルルはリーフの妖精の紋章を見ると、ひざまずいて太ももに顔を近づける。

リーフは恥ずかしさで顔が真っ赤になった。

「あの・・・やめてください・・・。」


「ああ、ごめんね、リーフちゃん。この紋章は・・・。いや、見てもらった方が早いかな。」

シャルルは自分の服を脱ぎ始めた。白く細い体のあちこちに酷い火傷の跡がある。

そして背中・・・・。


「あっ!」

思わず叫ぶリーフ。シャルルの背中にも、妖精の紋章があったのだ。


「これは・・・、どうして、あなたの背中に妖精の紋章があるの?!

妖精の紋章は、妖精の末裔と言われるホシフルの国の王族の妻にのみ・・・王族の血をもって刻まれるもののはず・・・。男のあなたが、どうして?!」


「これは、妖精が刻んだ紋章ではないんだ。ある預言者によって目印として彫られたもの。この紋章を持つものが私の前に現れて、赤のドラゴンを復活させ、この世界を救うという・・・。」


「赤のドラゴン・・・。」リーフは忘れたくても忘れられない、自分の使命を思い出す。

その場にへたり込んでしまった。

(言いたくないけど・・・。隠しても仕方ないな・・・。)


リーフはこれまでのこと、赤のドラゴンを復活させる方法のことなどをポツポツと二人に話した。


それを聞いて無言になるシャルル。


「要するに、赤のドラゴンを復活させるには、おまえとシャルルが寝ればいいのか?」ヒューがストレートに言う。


「・・でもボクは、ほかの方法もあると信じて探しているんです!」


シャルルは、泣きそうなリーフの手を取って自分の、つぶれた右目に押し当てた。

触れたところが熱く、そして紋章が紅く光る。これまでに幾度か味わった感触・・・。

シャルルは間違いなく赤の欠片の保持者だ。その右目の奥に。


「ああ…、リーフちゃん、可哀想に。随分大変な目にあって来たんだね。」

「え・・・ボクの心が読めるの?」

「肌が触れると、ほんの少しわかるんだ。その人の心が。でも、許してほしい。君には残酷なことだと思うけど、”ほかの方法”を探すには時間がないかもしれない・・・。」

「時間が?」


シャルルはリーフの手を取って立たせた。

「少し休んで、服を整えたら、行こう。預言者のところへ。」

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