第24話 死の予感

 

リーフの、ブカブカのTシャツの胸元は、マーリン王子の手のひらに付いた血で赤く染まった。


「いたいっ・・・」

殴られて叩き付けられた全身と、 血を流す傷と、乱暴に掴まれている胸が激しく痛む。



王子は、キスというより呼吸をふさぐように唇を重ねた。

息が出来ず苦しい。



カチャカチャと金属音がして、リーフの両手はベッドに取り付けてある鎖につながれた。


身動きが取れなくなる恐怖に、足をばたつかせて抵抗する。



幸か不幸かその足が王子の脇腹に当たる・・・王子はリーフの顔を何度も強く平手打ちした。


また口の中が切れ、血の味があふれ出す。




「ボク・・・本当に殺されるの?」


マーリン王子の容赦ない暴力に、リーフは初めて〝死”を意識した。


こんなところで、死ぬかもしれないなんて。


お母さん、お父さんにもう会えないの?


たいして仲良くないクラスメイトすらもう一度会いたいと思った。



マーリン王子はナイフを取り出し、リーフのTシャツを切り裂いていく。


刃先が頬に当たり、また傷が増えた。


全裸にされた体を何とか隠そうとするが、両手が鎖でつながれていてどうしようもない。



女の子として辱めを受けながら死ぬなんて、あんまりじゃないか。


ボクが何したっていうんだ・・・



恐怖と情けなさと悔しさでポロポロ涙が出てきた。


このマーリン王子には命乞いをしても無駄だと分かった。




「せめて…最後にそのお菓子が食べたいです・・・。」


リーフは懇願した。

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