第14話 俺はモンスターみたいなんだ!
気が付けば――密室にいた。
一体――どれほど、サクラさん眠らせられたのだろうか?
自分でも、よく分からないや……。
「――あのぅ……?」
僕は視線の先を
すると、そこには――。
空色のミディアムヘアをした――『美女』がそこにいた。
一言で――
なびやかなスーツをまとっている。
「――あら?ようやく、お目覚め?」
どうして?今日はよく美少女や、こんな美女と出会うのだろうか?
自分でも、その
「――ここ、は……?」
「ここは、S.I.O.の取調室よ?」
「――あなた、は……?」
「――私の名前は――“
――陰陽師よ?」
――陰陽師。
かつての律令時代、陰陽道において
そんな職業が、まさか――現存しているとは……、うごご……。
どうやら、僕の理解を超えた何かが、起きているらしい。
だがね。だからね、到底理解できぬものなのだよ?
「ちなみに、私の階級は『警視長』よ?」
めちゃんこ、大物やん……。
お会いできるだけで、光栄なのだろうか?
「さて、私の事はどうでもいいわ?
“イツカ”君、あなたにいくつか聞きたいことがあるの……」
「奇遇ですね?僕も同じです」
志乃さんは僕を
「――単刀直入に聞くわ。
イツカ君、あなたは――何者かしら?」
「県立
「そこまでは既に調査済みよ。
ズバリ、私が知りたいのは、あなたの『戦闘能力』。
上級悪魔をあっさりとほふるその
僕は視線に影を落とした。
「どうしたの?答えらない問題でもあるのかしら?」
「――それが……、僕にも、よく分からないんです」
「……分からないとは?」
「志乃さんは『夢』を信じますか?」
その一言で片づけられる程に、僕の夢はそう易々と紐解けるわけではない。
まるで、
が、しかし、同時に
僕は“彼女”といつも――出会う。
名も知れぬ一人の美女に……。
「――夢?」
「詳しくは『明晰夢』のことですよ?」
「――つまり?」
「僕は度々、意識を失う疾患に悩ませられているんです。
精神科の先生曰く、ストレス性から訪れる病だとか……。
あぁ……、脳に異常はないんですよ?
それは、脳外科の先生にちゃんと診てもらいましたから」
「それが、あなたの『強さ』とどう関係しているのかしら?」
「僕は一年前から、この疾患に悩まされています。
そして――」
僕は呼吸を整えると、志乃さんの瞳を見つめた。
志乃さんの空色の師玉には、青ざめた僕の姿が鮮明に映し出されていた。
「……夢を見る度に――僕は強くなっていく」
志乃さんは別段、驚きもしなかった。
「――そう……。大変だったわね?
イツカ君、あなたの心境は察するわ。
まるで自分が誰か――分からなくなるわよね?」
「――教えてください……。
僕は誰で、一体何者なんですか?」
僕は自分自身を――疑った。
その境界線すら汚濁に染まりきってしまった僕という怪物。
分かることがあるとすれば、自分が何らかの
「――少なくとも、ここが『現実』よ?
そして、あなたの名前は――イツカ。
まさか、両親のや兄妹の名前さえあやふやじゃ、ないでしょうね?」
「りょ、両親の名前も兄妹の名前もちゃんと覚えています……!」
「……そう。なら良かったわ」
志乃さんは深い溜息を零した。
それは安心に似た代物だった。
「……でも、どうして?……どうして?
僕が……、警察なんかの世話にならなくちゃ……、ならないんですか?」
志乃さんは呆れたように僕を見つめ返した。
「それは、あなたが――『危険人物』だからよ?」
「――僕が……、危険……?……人物?」
「あなたの話しによれば、イツカ君。
少なくとも、あなたは明晰夢と現実の狭間をさまよっている、ということになるわ。
その危険性が分からないほどに、あなたも愚かじゃないわよね?」
それは、今日のように突然、意識を失ったり、暴力を振るったり、することを指し示すのだろうか?
「――イツカ君?あなたは連続して『金縛り』のような体験をしているのよ」
「――金縛り……、ですか?」
「――そう。
金縛りとは現実と明晰夢の狭間で起きる瞬間だとされているわ。
普段なら、レム睡眠で明晰夢を見て、ノンレム睡眠の際に深い眠りにつく。
その反対が起き、ノンレム睡眠をぶっ飛ばして、いきなりレム睡眠をとっているのよ……、あなたは……。
まぁ、あくまでも、私の仮説だから……、そんなに深く考えないで?
それよりも疲れは溜まっていく一方じゃない?」
「えぇ……、疲れが晴れることはありません。
その日々をまるで重石でも背負っているみたいです」
「睡眠薬や安定剤は飲んでいるの?」
「勿論、服用しています。
けれど、中々、改善されることはありません……」
「それでも――夢とは
「毎回、同じ夢を見ます。
そして――」
僕は一拍だけ置いて、志乃さんにそう伝えた。
「……僕は――“彼女”と出会う」
志乃さんはあからさまに首を傾げていた。
「“彼女”って――誰?」
「――夢の中でいつも出会う、とても大切な人です。
こう金糸の髪をしていて、とても美麗な顔立ちなんですよ?
僕は現実世界でも、度々、“彼女”から助言を頂いています」
「へぇ……。だとしたら、その
「僕も分かりません。
今日も一回だけ、突然、意識を失ったみたいですし……」
「それは?安定剤だけじゃ、治まらないの?」
「残念ながら……。
でも頻度は下がっています。
それでも、完璧と呼べる程にまでには至ってはいません」
志乃さんは考え込むように顎に手を添えた。
「――謎の“彼女”。
そして――夢
その
これはオカルトの
いや、悪魔を祓える時点で、現実と夢は繋がっている?
じゃあ、どうして?
イツカ君はその度に強くなるのかしら?」
志乃さんはまたもや、深い溜息を零した。
「ふぅ~、一言で謎ね?
でも、その明晰夢が『鍵』であることは間違いないわ」
ひとしきり考えきったのか、志乃さんは携えた扇子をパッ。と咲かせた。
「――ごめんなさいね?
こうなった以上、あなたを無事に自宅へと戻すことはできないわ?」
「――ど、どうして……、ですか?」
僕は思わず、身を乗り出した。
「だって、夢遊病患者を、そう易々と自宅に帰すことはできないでしょう?
素直に、病院へと直行してもらいたい所なんだけど……?」
「えぇ……、両親にも迷惑が掛かるじゃないですか」
「当たり前でしょ?ご両親には迎えにきてもらわなくちゃ」
「ぜ、絶対に嫌です!」
わざわざ、こんな都会まで僕を送り出してくれた両親。
そんな両親までに、迷惑を掛けるわけにはいかない。
「……どうして?そう、かたくなに断るの?
病気のことはご両親には伝わって、ないの?」
「い、言っていません。
流石に両親には迷惑は掛けられないので……」
志乃さんは難しそうに眉をひそめた。
「イツカ君?あなた馬鹿なの?
そういう重要なことは――家族に一番に伝えるべきでしょう?」
「そりゃ、そうですけど……、僕にも意地があります!
両親はせっかく汗水たらしたお金で高校に通わせて頂いているんですよ?
ましてや、独り暮らしなんて尚更。
これ以上に迷惑を掛けるにはいきませんよ!」
「その根性、潔し――腹が立つわね?
まぁ、いいわ?
それなら、こっちにも治安を維持する権利があるから」
「ぼ、僕をどうするつもりですか?」
「どうにも、こうにもしないわよ。
その代わり、『保護観察』として、処分させて頂くわ」
「……ぼ、僕に『法律』は適用しないのですか?」
「あら?ごあいにく様、ここはS.I.O.よ?
イツカ君?あなたのような異常者から治安を守るために、置かれたような特務機関よ?
オカルトに対抗する為にはオカルトで対抗するしかないのよ。
……残念ながらね?」
「僕がいつ、オカルトを信用したとでも?」
「あの娘たちに会ったのでしょ?
時は既に遅し、だわ」
志乃さんは花曇のように口角を歪めた。
「――あ、あの!せめて、救いはないのですか?」
「そうね~?イツカ君?
私たちの――協力者にならない?」
「――ほえ?」
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