神官ギルド

 良い女が腰をくねらせていたので、そちらを見ていたら思いっ切り頬を抓られた。

 そう言うことを楽しむ場所でやられたので、中々に理不尽な状況だ。

 そんな訳で苦言を言ってやろうと思ったら赤い髪のお姫様は大層ご機嫌斜めで睨んで来た。


「ヘイ、アンナ。テメェは俺の彼女か? ちげぇだろ?」

「あら? この前、確か『俺の女だから手を出すな』みたいなこと言ってたじゃない?」

「はっはー、そんじゃ俺の女だってんならお前に手を出すのはオーケイって訳だ」

「別に良いわよ?」

「……」

「さ、どうする? 二階、行く?」


 ふふん、と腕を絡ませながらアンナ。


「……リコならなぁ」


 未だ食指が動くんだけどなぁ。

 アンナじゃなぁ。

 胸がなぁ。


「ヘイ、ヘイヘイヘイ! いてぇ、いてぇ、いてぇって! 尻を抓るんじゃねぇよ!」

「言っとくけどアンタ今、本気でサイテーだったからね!」

「オーケイ、プリンセス。今後は気を付けるから手ぇ放せ。尻が千切れる」

「――ミリィさんに言いつけてやる」

「それは本気でヤメロ」

「……何? アンタ、ミリィさんみたいな人がタイプ?」

「まぁなー」


 だからリコは十年後くらいに期待。アンナは百年後くらいに生まれ変わった辺りを期待。

 大体そんな感じだ。


「ツルペタもいいもんよ?」

「自分で……つーか、女の子がツルペタ言うなや」


 そんなじゃれ合いをしながらケイジとアンナはストリップバーの中を進んで行く。今回、キティは事務所にはおらず、何時もの関係者席に居るらしい。ケイジの入室に気がついたバーテンが、くい、と親指でバーカウンターの横を指し示した。

 ちょい、と軽く手を挙げてお礼を言ってそこに向かう。柔らかいソファーに沈みながらミリィを抱き寄せるキティの姿が有った。


「ヨ、ヨ、ヨ? 昨日ぶりじゃねぇか、ボーイ? どうしたぁ?」

「朝刊のお届けだよ、キティ」


 ミリィとアンナがお互いに小さく手を振り合って再開を喜ぶ中、ケイジは、ほれ、とヴァッヘンのみで発行されている開拓者向けの新聞を差し出す。


「……何か面白ぇ記事でもあったか?」

「四コマの『撲殺クマさん』がシュールで良かったぜ?」

「それ以外は?」

「それ以外? それ以外だと、そうだなぁ――」


 折り目を付けた個所を開きながら――


神官クレリックギルドの司祭と、シオミコーポレーション・ヴィレッジの村長が殺されたそうだ」


 はっはー。金づるが一晩でパーっすわぁー、とケイジ。


「ヨ! せめて今月分の電池代くらいは欲しかったぜぇー」

「……なぁ、何かよ、やたらと記事で『ポケットにサボテンが入ってた』って強調されてたんだが、何か意味あんの?」

「おぅ、マジか? マジだ! そうかー……ミッシェルの野郎が動きやがったな」


 こりゃこの記事も新聞に書く様に握らせたなー、とキティが口を『へ』の字に曲げる。


「……ボーイ、オメルタって知ってるか?」

「わりぃ、知らねぇ」


 テメェはどうだ? 傍らのアンナに視線を向けてみるも、ふるふると小さく顔を振られるだけだった。


「ヨ。血の掟、って奴だ。旧時代のマフィアが運用していた『ルール』でな、破ると割とエグく拷問された後に殺される。で、死体はメッセージに使われるわけだ。例えば組員の女に手を出したら死体の口に花を詰め込む――みたいにな」

「ヤァ、ソイツが何で死んだかがわかる素敵なシステムだな。良いと思うぜ?」

「ヨ、ヨ、全くだ! ソレを蛮賊ギルド《オレ達》じゃなくて神官クレリックギルドがやってるってのが笑えねぇがな!」


 言葉とは裏腹に笑いながらキティ。


「で、『ポケットにサボテン』は何に対する警告だ?」

「……ミリィ、頼むぜぇー」覚えていないらしい。弟子の前であっさりと彼女に縋りつく大虎は成程。名前の通り、仔猫の様だった。

「ポケットにサボテンは盗みへの警告ね。なぁに? キティにリトルキティ、二人とも泥棒しちゃったの?」


 クスクスと笑いながらミリィ。


神官クレリックギルドの金に手ぇ付けたって意味ならそうっすね」

「ヨ。それにしても水漏れが激しいな。ボーイ、心当たりは?」

「ミコトじゃねぇかなとは思ってる。情報を手土産に、対立してる司教か、ケツ追ってた神父にでも寝返ったんじゃね?」

「あのお嬢ちゃんか。……ボーイと同じ見習いだから舐めて釘刺さなかったが……やるねぇー」

「ヤァ。俺よかよっぽど蛮賊向きだぜ」


 思ったよりも絞れなかったなー。と、嘆く師弟。

 まぁ『死者に口無し、財布無し』だ。仕方が無いので、残りは生きてる人に払って貰おう。


「んで、映像、どうするよ?」

「ヨ。問題はそいつだぜ、ボーイ。スキャンダルって意味なら使えるがなぁー……これ以上は持ってても影響力が落ちてくのに合わせて値崩れしてくだけだ。早々にミッシェルのヤツに売りつけとくぜぇー」

「幾らくらいで売れる?」

「金貨一枚、とれても二枚。それ以上なら勝手に開示しろで終わりだなぁ」

「ケー。随分と安くなったことに嘆きてぇ気分だが、俺も男の子だ。頑張って泣かない様に我慢するぜ。……あぁ、取り分は手間賃分そっちが多く取ってくれや」

「……何だ? 何か頼みがあるのか、ボーイ?」

「おー……流石だ。話が早くて助かるぜ」


 流石は俺のマスターだ! と軽く笑いながら、アンナの腰を押して前に出す。


「ウチのパーティへの加入予定のアンナ。神官クレリックになりてぇそうだ。やらかしたコトがコトで、今日の新聞だろ? コネが欲しいんだが……頼めるか?」





あとがき

みんな六時半からガキ使みると思うから、早めにむいむい、っと


神官ギルドを……

ミコトを……

舐めるなよ!!

と、言うお話。

いや、違う。アンナ加入ですよーって言うお話。

感想で次は女性神官だと予想しているかたがいたが、リコも同時加入なので半分当たりで半分外れでした。


これを誰かが読んでいる時、私は妖怪電球カエールと化して実家の電球を換えまくっていることでしょう。母ちゃんや、リビングのはね、去年LEDのに換えたから十年は換えなくても良いんだよ。

と、言う訳で次の更新は四日か五日か六日になります。

多分、有意義な時間の使い方はゲームやってる時間で見直して予約投稿しておくことだったんだと思う……。



今年一年、ありがとうございました。

感想くれたり、ブクマしてくれたり、ポイントをくれたり、レビューをくれたり、何よりも読んでくれる皆さんのお陰で何とか書き続けられました。

単行本3~4冊程の分量でお正月休みに読むのが最適な『Doggy House Hound』も無事に完結させられました(ステマ)。


まぁ、そんな訳で、皆さまよいお年を-っ!!!


あ、スガ〇ヤ食ってきます。

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