精霊も走る師走かな

「あー、やっと帰ってこれたよ、ただいまー」


「おう、おかえり」


「おこた出してたんだーそりゃそうだよね、部屋をでて一ヶ月くらい経ってるもんね」


「まあ、寒くなったしな。……そういえば、毎年この時期になるといなくなるのは何でだ?」


「それはねー、年の瀬になると願いの絶対量が半端なく増えるの。くりすますーとかおしょうがつーとか、ニューでイヤーな浮かれ放題な人間様がばんばんおらっしゃるわけ。あ、みかんちょうだい」


「あー、なるほど、願いを叶える精霊としては稼ぎ時ってわけか。ほい」


「ありがと。それで、くじであたった人を片っ端から叶えていくんだよ。もちろん、全部は叶えられないけど、きっかけぐらいまではね」


「くじ引きかよ。それにしても、きっかけか」


「あ、このみかんあまーい。そうそう、きっかけ。気づくかどうかは本人次第だけどね」


「主人の願いとは大分違うんだな」


「それはそう。キミはすでに試練を突破して私と契約してるからねー」


「あれが試練?」


「試練だよー。一応、前人未踏。ヒトの位をあげるほどの、ね」


「はー、そうなのか」


「それはともかく、明日から大晦日と三が日だし、また出かけなきゃいけないんだよねー。もうくたくただよ」


「大変だなぁ、精霊も。そうだ、ちょっと早いが、そばくうか?」


「サクサクの天ぷら二枚つき!」


「いっとくけど、それ、腹壊すぞ」


「精霊だからお腹壊さないもんねー」


「この前、冷たい牛乳がぶ飲みして腹壊してなかったか?」


「天ぷら一枚でいいです」


「素直でよろしい」

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