逆様とクリスマス

 勝手知ったる仲間たちとのクリスマスパーティを終え、私と逆様は自宅に帰還。


 逆様はプレゼント交換で貰った手袋を装着し、にぎにぎと手を開き閉じしている。


「全然楽しくなかった、クリスマスなんてずっとこなければいい」


 眼をらんらんと輝かせてそう言うものだから、私は笑ってしまった。


「むう」


 おっと、ちょっと不機嫌にさせてしまった。だけど、私はそれにも微笑んでしまう。


 最近、感情表現が素直になった賜物であるからして、その成果が嬉しいのだ。


「前からしおらしい」


 前からの反対は最近かな。えっと、しおらしいの反対語? 話の流れからすると、生意気?

 相変わらずわかりにくいなあ。反対語のボキャブラリーが増えていくばかりだ。


「逆様がかわいらしいから仕方の無いことだよ」


 さらに頬を膨ませる逆様を見て、私はさらに吹き出した。


 深夜、さて、と私は身体を起こす。灯りを付けないまま、押し入れに隠していた包装紙に包まれた箱を取り出す。


 クリスマスプレゼント。中身は、ICレコーダー。


 逆様がTVにかじりついて見ていたものだから、きっと喜ぶだろう。


 でも、なんでICレコーダーなんて欲しがったのだろう。


 今更ながら首を傾げるけれど、まあいいか、と私は向き直る。


 逆様の喜ぶ姿を一度は見てみたい、ただそれだけ。


 逆様の側にそっとプレゼントを置く。ミッションコンプリート。


 朝。逆様が手袋を付けたままの手で、プレゼントを目の前に掲げていた。


 眼がキラキラとしている。そして、包装紙を破り始めた。


 うわ、うわ、と言いながら中にあるICレコーダーを取り出す。


 ああ、満足。私は幸せな気分に浸りながら、朝ご飯を作りに台所へ。


 目玉焼きを作っている時、フリスクサイズのICレコーダーを口元に抱えながら逆様が私の近くに来た。


「なに?」


 私が尋ねると、逆様は聞き慣れない言葉をICレコーダーに呟く。


 そして、私の耳にICレコーダーを寄せ、再生ボタンを押した。


『サンタさん、いつもありがとう』


 ICレコーダーから、された逆様の声が聞こえた。


 逆さまでしか伝えられない神さまが、文明の利器で呪いせいやくを克服したのだ。


 思いがけないクリスマスプレゼント、私はそのまま逆様に抱きついた。


 目玉焼きは焦げてしまった。

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