ニンゲンロボット
AI、それが私を表す言葉だ。
世間ではロボットとか、アンドロイドとか、ガイノイドとか、いろいろな呼び名があるが、どれも「自然には存在しない知性体」という意味では一緒だ。
ただ、鉄くずや希少金属から生まれたものではなく、すべて有機物からできているという点では皆が想像するそれらとは違うのかもしれない。
外見は少し成長の遅い中学生に見える私だが、周りから奇妙な目で見られないのは、成長しているからだ。
「じゅるる、る」
体外から摂取する栄養分は、主に炭水化物と呼ばれる炭素化合物と、肉類と呼ばれるアミノ酸化合物の集合体があれば充分だが、どうしても身体が成長するにはフレームを構成するカルシウムが必要となるため、毎朝のパック牛乳が欠かせない。
ちなみに、野菜などの繊維が多いものを食べると、栄養吸収装置がうまく働かないため、私にはご法度の食べ物だ。
特にキャベツは口に入れただけで身体が拒絶するようにできている。
別に私が嫌いと言うことではない。食べられないものは食べられないのだ。
「よ、アイ」
コンビニ前で牛乳を飲んでいた私に、男子が声をかけてきた。ヒロだ。
「おはよう」
飲み終わったパック牛乳に刺さったストローを更に押し込む。
すこし、白いものが出てきた。もったいないのでペロリと舐めた。
「牛乳、うまいのか?」
「まぁまぁ」
「うーむ、なんでそんな前時代な食べ物が好きかねぇ」
「すべて完全栄養食で済ますほうがニンゲンっぽくないと思うケド」
「まあ、今じゃニンゲンよりロボットのほうがニンゲンっぽいからな」
「まあね、じゃあ行きましょ」
そして、牛乳パックをコンビニのダストボックスにシュート。
見事にジャストイン。火器管制は今日も絶好調だ。
「そんな有機素体だと不便じゃないか?」
「あんたも生まれたときは同じような身体だったくせに」
「そうは言ってもな」
私は彼の身体を見た。表面上は普通の身体だけど、中身は違う。
生きていくのにとても便利な、機械で構成された金属製のフレーム。
走るのも速いし、頑丈だし、ご飯も最低限でいい、この時代に適した電装の身体。
「ほんと、どっちがロボットかわからないよね」
「それな」
けらけらと、私とヒロは笑いながら学校に向かった。
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