精霊稼業

「ところでさところでさ」


「ん?」


「今すぐ叶えたい願い事ってある?」


「今すぐ?」


「今すぐ。はりーあーりぃふぁすとすとっぷ」


「英単語を並べてそれっぽく煽るのやめろ」


「ないの?」


「今すぐっていうと思いつかねぇ、すぐそこのラーメン屋でチャーシュー大盛りトッピング味玉々海苔メンマ大盛りワンタンチャーシュー替え玉頼んだらどんな形になるかとかは興味あるけど、それは願い事じゃねえしな」


「え、なにそれ面白そう」


「興味持つのかよ」


「じゃあそれを願い事にする?」


「いやだね、もっと有意義なことに使いたい、それに、そんな衝動的なことに3回しか無いチャンスを使えるか」


「えー、いいじゃん。どうせ減るもんだし」


「いや、減るじゃんか」


「だってさーそんな事言ってもう二年だよ? 二年経ってるのに一回も願い事無いんだよ? 私もーつかれちゃったよー」


「時間制限なんて無いからいけないんだ。アラジンもあんな狭いところで絶体絶命でなければずっと我慢して、いざって時に使ってただろうよ」


「あ、ディズニー版?」


「なんで精霊がそんなの知ってんだよ」


「この前の主人が見てた」


「意外と最近だな、前の主人の時代」


「ま、結局その人は無難な願いをしたけどね」


「……参考程度に聞かせてくれないか」


「企業秘密です」


「企業……サラリーマンなのかよ、精霊って」


「当たらずしも遠からず」


「まあいいや。願い事はまだまだ当分おあずけってことで」


「えー、ケチー」


「ケチで結構。んじゃ、ラーメン食いますか。願い事をしなくとも、さっきの願いは叶うだろ」


「……全く、便利な世の中で精霊稼業も上がったりですよ」

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