それでも人は故郷を夢見る。

『へぇ、こんなのもあるんですか』


『ええ、ええ』


 せせらぎが聞こえる中、二人の男の顔が見えた。


 一人は、初老の、灰色の背広を着た男。


 もう一人は、白衣を着た健康そうな男。


『これは珍しい。よくセッティングできましたね』


『ええ、再現するのに時間がかかりました。でも、良いでしょう?』


『全くもって、こんなものがあるのはここぐらいなものです』


『ありがとうございます。さすが〇〇様は良い感性をお持ちですね』


『いやいや、それほどでも』


『いえ、ここの入館料を聞いて驚く人は多いもので。一応、入館料がひとつの関門としているのですが、こんなに払えるか、という声を聞くと少々傷つくものですよ』


 清流と、苔から落ちる雫の音が、波紋を奏でる。


『しかし、一度入れば、その価値はわかっていただけると、私どもは自負しております』


『そうですな。一日中此処に居たい気分です』


『ありがとうございます。その言葉で、この環境を作った私達の心は報われます』


 二人の男は、二足歩行デバイス越しに会話を続ける。


 箱庭の中にある、大自然で。


 ここは『地球環境博物館』。


 今はなき、地球という惑星にあったと思われる環境を研究、再現、保存する博物館だ。

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