第6話山中鬼

異形の子らを屠る手に銀の血はとめどとなく流れ、私はとこしえの眠りについた彼らの証、水晶の角を荒々しく削りとり、手中に収めて数えれば二十一、粉にして含めば三千年は永らえよう。桜紅葉にも飽いた、人の世にも飽いた、地獄も浄土も行くことあたわず、こうして山中に居をかまえて無聊をかこって百年ほど。山の麓の女らをたぶらかし、異形の子をなした女らは自ら滝壺に身を投げて鯉となり、それを私が日々平らげて暮らしてきたが、いつ尽きぬとも知れぬ輪廻をこの手で生むのに倦む他ない。色恋の愉しみはつゆ知らず、気の赴くまま、筆の進むに任せて書画を描き、麓から迷いこんだ坊主が曼荼羅と崇めたのもつかの間のこと、袈裟を乱して私を調伏せんとしたが行方は知れぬ、否、鳥に変じて我が腹中に収まった。生きとし生けるものことごとくを屠って食らい、三千年の命が尽きるころ、私はこの世を滅ぼすことになろう。



ペーパーウェル04 お題「文具」

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