問題
「ノア、話したいことがあります。」
ルカの声にノアが首を傾げつつも、ルカに向き直った。
「ノアの食人行為については解決しましたね。」
「うん!葉っぱも頑張って食べてるよ。」
「住処もある。食事も大丈夫。」
「ボクはルカが大丈夫なら大丈夫だよ。」
ノアはにこにこと笑って言うが、ルカの顔は真剣そのものだった。
「残る不安要素は…資金不足です…」
「お金…」
「そこで1つお願いがあるんです。」
「何?」
「その髪、切っていいですか。」
ノアが目を丸くする。
「髪?ボクの?」
「はい。その長さならそれなりの金額にはなるかと…」
「えっと…ルカの役に立つなら…」
「大いに役立ちます。」
「じゃあ、いいよ。」
「ありがとうございます。じゃ、そこから動かないでくださいね。」
ルカは丁寧にノアの真っ白な髪を切り取った。
そして売れる長さの髪は紐で結んで袋に詰め、ノアの髪を丁寧に切り揃えた。
「うん、いい感じです。」
「軽ーい!」
ノアの膝ほどの長さがあった髪は襟にかからない程度になり、サイドも耳が少し隠れる程度の長さになった。
「よく似合います。」
「うん!」
「じゃあ私はこれ、売ってきます。」
「ルカ、ボクも連れてって。」
「分かりました。ノアの髪ですから。ただ、その頭は目立つので、隠してくださいね。」
ルカがノアに布を被らせる。
「あまり目立つ行動はしないでくださいね。」
「うん。」
2人は市場に向かうと、兵士に見つからないように人混みに紛れた。
そして髪を売り払うと、精肉店に行き、ノアの欲しがった肉を買った。
「帰りましょうか。」
「うん。」
「…ルカ?」
「っ!」
ルカが顔を上げると、アイクが目の前にいた。
「ルカ!生きてたか!ほら、帰ろう。今ならまだ許してもらえるかも…」
「アイク、俺は帰らない。…ノア、これ持って先に帰っててください。」
「やだ。ルカといる。」
「アヴェルス…!お前のせいでルカが!…殺してやる…!」
アイクが剣を抜き、ノアに突きつける。
「ノア、走れ!」
ルカがノアを庇うように前に立ち、ノアを押した。
「ルカ!何でだよ!何であいつを庇うんだよ!」
「…ノアはもう、人は襲わない。いや、元々襲う気なんてなかった。だから、守ろうと思った。それだけ。」
ルカはそれだけ告げると、人の間を縫うようにしてノアの後を追った。
その時、視界の端で何かが光った。
そして発砲音が響く。
「っ!」
肩を銃弾が掠める。
ルカは足を止めないように走り続け、森に逃げ込んだ。
「ルカ!こっち!」
ノアが岩陰から手招きする。
「ノア、怪我してないですか?」
「大丈夫。あっ!ルカ、血出てる!どうしよう…」
「かすり傷です。大丈夫。」
「洗わなきゃ!葉っぱ!葉っぱ探してくる!」
ノアはパニックになってルカの周りを走り回った。
ルカがノアの腕を掴んで抱き寄せる。
「ノア、大丈夫ですから。大した怪我じゃありません。」
「うん…」
「帰りましょうか。」
「うん。」
2人は小屋に戻ると、疲れ切っていたためにすぐに眠った。
「ん…熱い…何…」
「ノア、目が覚めました?」
「うわぁ!火だ!」
「どうやら見つかったみたいです。これから外に飛び出します。そしたらノアは湖に向かって走ってください。すぐ追いますから。」
「絶対、約束だよ。」
「はい。行きますよ。」
ルカは飲料水として取っておいた水を布に染み込ませると、ノアを包み込んで脆くなった壁を突き破って外に飛び出した。
「ノア!行け!」
ノアが走り出す。
ルカは燃え移った火を地面を転がって消し、小屋を取り囲んでいた兵士に囲まれる前にノアとは違う方向に向かって走り出した。
銃声が鳴り響き、銃弾が掠めていく。
それでもルカは走り続けた。
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