作戦
「なぁルカ。これで教会にアヴェルスがいたら悲劇だよな…」
「可能性は否定できない。でも…いない気がする。」
「そうかよ。」
子どもたちが教会に軟禁されてから数日。
初めての雨の夜を迎えた。
ルカとアイクは教会から離れたところを歩いたが、アヴェルスは出なかった。
しかし犠牲者が教会で出た。
神父だった。
「やっぱりいたのか…?」
「いや、違う。」
たまたま物陰から見ていたシスターによると、元々教会にいた子どもたちは部屋に入れられていたらしい。
そして教会の入り口に立っていた白髪の子どもに神父が声を掛けたところ、襲われたらしい。
「…謀ったな。」
「賢い子だ…」
「ならこっちも策を講じないとな。って事で、ルカ、あとは頼む。好きだろ?そう言うの。」
「はぁ…過去の記録を整理して分析する。」
2人は城に戻ると、過去の資料を集めて情報を整理した。
「1人でいる人を狙うのは間違い無いな。」
「最初はこっちの方が中心だから…元々はここら辺の村の子かもしれない。」
「ルカ、あの時は避難所を見てたよな。」
「そのうち狙う可能性もある。」
「警備の薄い避難所でも作ったら、ハマるかもな。」
「そんな単純に行くものなのか…?」
「物は試しだろ。」
「分かったよ。やってみよう。」
2人は隊長に事情を説明すると、避難所の1つを空けさせた。
そして次の雨の日の夜、2人は罠の避難所の近くに身を潜めていた。
「これで捕まるのか…?」
「物は試しだって言ったのはアイクじゃないか。」
「まぁ、そうだな。」
夜も更けてきた頃、ついに屋根の上にアヴェルスが現れた。
そしてアヴェルスは避難所を見つめた。
「来た…!」
「追い立てるか。アイク、下を頼む。」
「任せろ。」
ルカが屋根に登ってアヴェルスの背後に立つと、それに気付いたアヴェルスが身構える。
「逃げないんですか?」
「……。」
アヴェルスはルカをひと睨みすると、避難所の窓を突き破って中に侵入した。
「掛かった!」
ルカの声にアイクが避難所に飛び込んでいく。
ルカもアヴェルスが破った窓から中に入っていった。
「ゔゔ…」
アヴェルスは嵌められたことに気付いたらしく、四足歩行で身を低くし、低い唸り声をあげて2人を威嚇した。
「残念だったな。」
「…今回は逃げないか…」
「本当にただの子どもだな…」
2人がジリジリと近付くと、アヴェルスがアイクに飛びかかった。
そしてそのまま床に押し倒す。
「ガゥッ!!」
「うわ!」
「アイク!」
ルカが慌ててアヴェルスを羽交い締めにして引き離し、床に押さえつける。
「ゔゔ!ガゥ…!」
「ルカ!やれ!」
ルカがナイフをアヴェルスの首筋に当てた瞬間、アヴェルスがひゅっと息を飲んだ。
「あ…あぁ…」
「…アイク、待って。…外、見て。」
「外?…雨、止んだな。」
「い、いや…助けて…」
「これだけ殺しといて助けろ?笑わすな!」
「ち、ちがっ…!嫌だ…!」
「…一応拘束させてください。殺しません。少し話しましょう。」
「ルカ!?」
ルカはアヴェルスを後ろ手に縛り、両足も足枷をした。
そのまま近くにあった椅子に座らせる。
「君、もしかして無意識に人を襲ってたんじゃないですか?」
「分かんない…ボク、分かんない…怖い…」
「お母さんは?」
「お母さん…いなくなっちゃった…」
「家族は?」
「…いなくなっちゃった。」
「雨の日のこと、覚えてます?」
「分かんない!帰りたい!殺されちゃう!やだ!やだ!死にたくない!」
ルカが泣き叫ぶアヴェルスの頭をなでる。
「今は殺しません。ただ、帰すわけにもいきません。行きましょうか。」
ルカがアヴェルスに猿轡を噛ませて抱き上げる。
そして城に連れていった。
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