第31話 ロリっ子バニーのトイレ事情?
俺はしばらくツブヤイターの
そして自分だけではなく、アカウント名ロリっ子バニー、
彼女は可愛らしいお菓子やぬいぐるみなどの小物、スイーツなどの画像をアップしていることが多かった。口調は関西弁で、先ほどの彼女……いや、彼か、そのまんまだった。活発で可愛い物が大好きな関西の女の子というイメージしか湧かない。
時々は自撮り写真もupしており、フォロワーさんだけでなく、FF外からも可愛いと絶賛されていた。
うむ。確かに可愛い。男の娘でなければ惚れたかもしれない。さっきは密着されて少し反応しかけたわけだし。
スマホの画像からソファーで寝ている美海さんの方を見る。すやすやと気持ちよさそうに眠っているその姿は本当に可愛らしい。アイドルとして売り出してもいけるのではなかろうかと思うくらいだ。そしてスマホの画像を見る。正直な話、今の寝顔はその画像よりも可愛い気がする。
しかし、美海さんの投稿を見てみると清々しい程に素直だとわかる。誰にも遠慮せず、完全に女子生徒の制服を着て学校に通っているようだし、違和感も全くない。
見た目の違和感はないのだが、それなら体育の授業やトイレはどうするのだろうか? 我が学園では、何故か男子は格闘技の授業があり剣道か柔道を受講しなくてはいけない。その時間帯、女子は家庭科になるのだが、さて美海さんはどちらに参加しているのか。個人的にはエプロン姿で料理をする美海さんの姿は容易に想像できるのだが、剣道の面をつけて竹刀を振る姿は想像できない。そして我が学園の女子体操服は、今時珍しいブルマなんだ。心は女性でも体は男性なんだ。という事は、美海さんがブルマをはく美海さんの股間がもっこりと膨らんで目立つのではなかろうか。
そしてトイレである。仮に、美海さんが女子トイレに入れば周囲の女子はどう反応するのか。そこで眠っている彼女……いや、彼ならば全く違和感がないと思う。しかし、美海さんが男の娘だと知っていれば嫌悪感を覚える女子もいるだろう。一部にでもそういう不快感を表す人がいれば問題になるのかもしれない。また、女装男子が女子トイレに入る事を黙認するなら、不届き者の男子生徒が何か性的ないたずらをしら、取り返しのつかない事態が起きるかもしれない。
学校側とすれば、いくら性的違和をもつからと言っても女装男子が女子トイレに入る事を認めるわけにはいかないと思う。
逆に美海さんが男性トイレに入ったとしたらどうなのだろうか。美海さん本人が平気なら問題はないような気がする。周囲の男子生徒が美海さんをからかったりした場合は、むしろその生徒の方が非難されるべきか。性的マイノリティへの差別になるからだ。
中々難しい問題だと思う。しかし、美海さんはあんな性格だ。ずうずうしいというか、厚かましいというか、自己本位の塊だというか、あの人の好きにさせてあげればいい。そんな感想しか湧いてこない。
美海さんの寝顔を眺めながらアレこれ考え事をしていると、再びスマホに着信が入った。彩花様からだ。
「はいはい、弟君。健やかに過ごしているかね?」
「えーっと、それはどういう意味ですか?」
「文字通りの意味だよ。不健全な妄想に浸っていないかという問いに決まっているだろう」
「不健全ではないと思います。ところで美海さんって、学園ではトイレどうしてるのかなって」
「その件か。美海姫は堂々と男子トイレに入っているぞ」
「堂々と?」
「当たり前だ。ま、美海姫は至って平然。周囲の男子生徒が赤面してオロオロしてるくらいだ。『ウチにもチ〇コついとるんや。何も恥ずかしい事あらへんのやで』とか言ってるんだな。笑える」
「なるほど」
疑問は晴れた。非常にすっきりとした気分だ。
「ところで弟君。今夜、辰巳家で有志が集いカラオケパーティーが開催される予定だ。
「俺も参加するんですか?」
「もちろんだ。藍と一緒に参加してくれ」
「えーっと。俺はパリピとは無縁なんで、そういう場は苦手なんですけど。藍ちゃんも多分そうです」
「その辺の事情は理解している。無理しなくていい。恐らく大学生連中が酒を持ち込むだろうが、絶対に飲まない事。自分はまだ高校生、未成年だという事を忘れるなよ」
「わかってます」
「おそらく今夜、連中が尻尾を出すはずだ」
「はい?」
「私たちも可能な限りバックアップするが、自分の身は自分で守るように。それと藍の事も頼むぞ」
「わかりました」
切れてしまった。
今夜のカラオケパーティーで仕掛けてくるらしい。
江向吹雪が主催する学園フェミ協会が、俺たちの学園を牛耳る事が目的だ。その方法としてフェミニズム的な考え方を取り入れ、男女共学は性的に乱れてしまう可能性が高く女性への害悪となるため、男女別学を目指すというものだった。
恋愛感情のもつれ、フラれた腹いせから自作銃や自作爆弾まで製造し、学内テロを企んでいる……みたいな犯行を自作自演ででっち上げる。そんな計画が話し合われていた。どこまで本当なのかはわからないが、俺と藍が(仮)でもちゃんと付き合っている姿勢を示し、他者からの誘惑を跳ね飛ばせばいいんだ。
俺はスマホの待ち受け画面を見つめながら何度も頷いていた。
「なあなあ緋色君。さっきは誰と話してたん? アレは緋色君の彼女とは違う人やろ? まさか、緋色くんは二股かけとんのか?」
いつの間にか起きていた美海さんは俺の背にくっ付いて来た。そして俺の耳にふうっと息を吹きかけてくる。
「なあなあ。アレは誰や? いわゆる三角関係なんか? もうちょっと頑張って四角関係とかやってみんか?」
この人は何を言ってるんだ。
俺は振り返って美海さんの真意を問いただそうかと思ったのだが、彼女はしっかりと俺の背に抱きついていた。
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