第21話 恋人(仮)は誰にしますか?
「弟君。今すぐ私と付き合えば災厄から逃れられるぞ」
「それはどういう……」
「何か誘われても『生徒会長が待ってる』とか『彩花様と約束がある』と言えば確実に逃げることができる。私の肩書は学園最強だ」
確かにその通りだ。しかし、そんな情報が拡散してしまえば俺の身は危ないんじゃないか? あの彩花様親衛隊に何をされるか分からない。
「彩花、それは危険じゃないの?」
「そうそう。アンタの親衛隊ってすごくラディカルじゃない。時には暴力行為も厭わないみたいだし」
椿さんと玲香姉さんが突っ込むのだが、彩花様はどこ吹く風といった風だ。
「一応、暴力行為は禁止してある。見つけた場合は即刻退団。威嚇行為は黙認かな。度が過ぎる場合は隊長が注意するし、私が名指しで文句を言えば、そいつこそ村八分になる」
なるほど。弁護士の隊長さんだ。
「ちょっといいですか?」
藍が挙手をした。
「確かに緋色と彩花様先輩が付き合うのは……クヤシイケド……」
「何?」
「何でもありません、彩花様先輩。しかしですね。今、私たちの最大の目的は何ですか? あの学園フェミ協会の陰謀を阻止する事じゃないですか?」
「それはそうだが?」
藍の質問に答える真剣な眼差しの彩花様だ。そして藍が続ける。
「ここは相手の策もバレている事ですし、それに乗っかってみたらどうでしょうか」
大胆な意見だが、それはそれで恐ろしいぞ。
「藍ちゃん。それじゃあ弟君が危険じゃないの? 濡れ衣も着せられるし」
流石は椿さんだ。ごもっともな意見。
「こっちも盗聴と盗撮で対応すりゃいいじゃん。さっきのスクショは取ってるんだろ?」
何だか堂々と不法行為を勧めている玲香姉さんだ。
「そんでさ。あの越ケ浜と緋色のムフフなシーンも録画して」
「玲香ちゃん。それは緋色君に悪いわよ」
「緋色も役得だろ? 越ケ浜って、意外と可愛い系だし胸もFカップでぽよぽよなんだよなあ。この際だからやってもらいなよ。最低、手でしてもらえるんだよな。もちろん、録画するからね」
玲香姉さん、何てことを言うんですか?
そんな目に遭わせようって?
嬉しいかも……いや、それは違う。
「あれれ? 緋色は嬉しくないの? 越ケ浜って、Fカップの可愛い系だよ。まあLみたいだけど、男子にも人気あるよ」
「できれば遠慮したいです。そういうの、本当の恋人同士になった人となら……」
いやいや、いくら綺麗どころだからって、俺はそんな無節操じゃない。すかさず彩花様が突っ込んできた。
「だから、弟君は私と付き合うのがいいんだ。私なら安心だろ? 余計な冤罪を気にしなくていい」
ううう。それじゃあ彩花様に、とことん遊ばれるに違いない。
「いいえ。弟君が彩花にもてあそばれるのを黙って見過ごすわけにはいきません。私は弟君の幼馴染として、弟君を守る義務があるのです」
「出たよ。椿の母性本能丸出し発言」
「それは関係ありません。私はこれまで緋色のお姉さんとして、時には母親代わりとして接してきました。それはこれからも変わらないわ」
椿さんがそこまで俺に入れ込んでいるとは思えないのだが、しかし、思い当たる節はあった。佳乃家三姉妹の中では椿さんがダントツで俺に良くしてくれていたのは間違いなかったからだ。
「はいはい。そこまで。あのさ、椿は緋色との付き合いは長いだろうけどね。今は私が緋色のお姉さんなのよ。姉的優先権は私にある」
「でも、玲香と緋色は姉弟になった。恋人にはなれないでしょ。だから私が弟君の恋人になればいい」
ブルンと胸を揺らして椿さんがにじり寄ってきた。やはり母性というか、年上の包容力のようなものは桁違いだ。
「いいえ。緋色の好みは私ですからね」
「だからといって、姉弟で恋人同士なんて許されない」
「私が恋人になれば誰も文句を言わないから私が最適なんだ。わかってるだろ?」
玲香姉さん、椿さん、彩花様が言い争っている。やや険悪な雰囲気になりかけたところで藍が再び挙手をした。
「ええっと、よろしいでしょうか。ここは緋色の意見は無視して」
無視だと?
正気かよ!
「要は敵の策をかわすための、仮の恋人を設定するって事ですよね。向こうも仮の恋人関係を設定するみたいですし」
「当面はな。しかし、私は本気だぞ」
「まあまあ、とりあえず彩花様先輩のお気持ちは置いといてください。今回の騒動が終わってから、誰を恋人にするのか緋色に選ばせたらいいと思います。それまでは(仮)ですから。そこで私から提案があります。玲香姉さま先輩は除外します。(仮)といえども姉弟での恋愛は問題がありますから、本気でそっち方面へと走るなら当人同士で極秘扱いにてお願いします。残りの三人から(仮)の恋人を選びます」
「なるほど。(仮)の恋人だな」
「そうです。彩花様先輩。そして、お弁当はその(仮)の恋人が作るようにします。期間限定で超熱々カップルを演じるのです。それでですね。彩花様先輩と椿姫先輩は学園二大美少女と言われている垂涎の的。その二人が恋人になってしまっては他の女性は手が出しにくい」
「確かにそうかもしれん」
「でも、私ならどうでしょうか? あんなデブっ娘なら寝取ってやれるって思うんじゃないかな? 違いますか?」
藍、何を言ってるんだ。
「そうかもしれない。後々寝取るという楽しみもある」
「妙な説得力があるわね」
「NTRNTR。あああ。これはこれで来ちゃいそう」
彩花様先輩と椿さんと玲香姉さんが、三人揃って納得している。マジですか?
「じゃあ。(仮)の恋人は私に決定ですね。やったー」
大喜びの藍であった。そして彼女は俺の頭をギュッと抱きしめ、その豊満な胸を、1メートル越えのGカップの胸を押し付けて来た。その柔らかくてフワフワの感触に、俺は唯々たじろいでしまっていた。
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