第20話 密談俯瞰もいとおかし

 越ケ浜佳澄こしがはまかすみ。江向吹雪の手下第二号らしい。三年B組。彩花様と椿さんと玲香姉さんたちはA組だからとなりのクラスという事になる。


 しかし、どんな方法で他人のスマホに接続してるんだ? 俺にはさっぱりわからない。


『で、どうするのさ?』

『ホームセンターで爆発物の材料を買う。後は銃の材料だな。銃弾は鉛で作るから釣り道具の錘を使えばいい。銃身は水道管で代用できる』

『え? 本当に銃を作っちゃうわけ?』

『馬鹿だな。作るフリをするだけさ。あの赤色っていうオスガキに自作銃と手製の時限爆弾を作らせるのさ』

『できるのか?』

『だからフリだけだ。実際に完成させる必要はなくて、そういう危険なものを作ってるって証拠をでっちあげる。そして警察に家宅捜索させるんだ』

『あ?』

『わかったか? 童貞をこじらせたオスガキが、フラれた腹いせに爆弾作って仕返ししようとしてる現場を警察に抑えさせるんだ。ま、実際にレイプ未遂とかでもいいんだけどな。そういった性的被害でも効果的だと思うが全国ニュースにはならない。まあ、そんな不祥事が全国放送でニュースになれば校則強化には決定打になるだろうよ』

『え? でも冤罪だろ? それでもニュースになるのか?』

『問題ない。どうせあとから無罪になるだろうし、佳澄の悪戯だったって事で円満解決だ。痴漢行為なんかの冤罪よりは後がすっきりするだろ』


 そんな訳あるか。爆弾作ってるって警察に逮捕されて全国ニュースになって、後で無罪放免になるからってそんなの受け入れられるわけがないだろ。それに俺は、何を使ってどうすれば爆弾になるのかその知識もない。銃の構造も爆弾の構造もよく知らないし、そもそも火薬なんてどう作ればいいかの知識など無い。自分が作れるのは、割りばしを組み合わせて作る輪ゴム銃くらいだ。これは自信があるけど……。


『私を悪者にするのか?』

『いいじゃないか。NTRの実践だ。存分に楽しんだらいい』

『私が楽しむのか? 楽しんでいいのか?』

『ああ。オスガキをたぶらかして楽しめよ』

『うーん。本番セックスは抵抗があるなあ』

『したけりゃすればいいし、オスガキをその気にさせて逃げるのも面白いよ』

『え?』

『だから。本気にさせといて〝今日は生理なの。ごめんね〟とか、急に電話がかかって来て〝ごめん。用事ができちゃった〟とか、はぐらかす手は幾つもあるよ』

『詳しいな。経験者か?』

『ちげえよ。ま、ちょっとエッチなそっち系の小説とかが好きなだけ』

『BLじゃなくて? 百合じゃなくて?』

『うん。まあいいじゃん。男女の絡みも結構好きなんだよ。もちろん、女視点じゃなきゃキモイけどね』

『その話は置いとけ。じゃあ作戦を練るぞ』

『そりゃそうと、どうするのさ。誰もあの赤色と顔見知りじゃないだろ?』

『清十郎を使う』

『マジかよ。あいつガチのゲイだぞ』

『まあまあ。先ずはこれだ。奴はこの間〝どきどきメモリアル〟の最新作を買ってあのオスガキの所でプレイしようとしていた』

『ああ? そりゃケツ穴狙い?』

『さあな。ただし、あのオスガキもあっち系の美少女ゲームが大好きなのさ』

『ほほう』

『そこでだ。佳澄が清十郎と付き合っている事にする。そして、オスガキと清十郎と三人でゲームするんだ』

『私が清十郎と付き合う?』

『我慢しろ。そういう設定って事だ。そこでだ。三人で仲良く部屋にこもって美少女ゲームをするんだ』

『わかった。3Pするんだ』

『馬鹿者。お前は黙ってろ。とりあえず、どきメモのエッチなシーンをプレイするんだ。それでな、清十郎に席を立たせる』

『できるのか?』

『私が電話すりゃいいだろ。でな、そこで佳澄が赤色とか言うオスガキに告白するんだ』

『いきなり好きっていうの? そりゃ違和感あるよ』

『馬鹿。清十郎との関係に悩んでるって事にするのさ。自分は彼が好きで抱いて欲しいのに、肝心なところでいつもはぐらかされる。自分は大好きなのに彼は無関心みたいだ。どうしたらいいの? 男の子はどうしたら喜んでくれるの? みたいなアプローチさ』

『なるほど、そりゃ自然かも。ゲイの清十郎なら女子になびかないし、それに悩む乙女なら』

『だろ? エロシーンの途中で清十郎が出ていく。オスガキは当然勃起してるだろ。そこで佳澄がしなだれかかるんだ』

『それ、ヤバくないか。そのままレイプされるかも?』

『それならレイプの証拠を押さえて訴えりゃいい。だが、目的はそうじゃない。できればさっき言った〝今日は生理なの〟を使って後日にってのが理想だな』

『おお。オスガキと付き合うかもしれんって方向に持っていくのか?』

『そう。オスガキを本気にさせるんだ。普通の男はヤラセてくれる女を拒む事はない。相当なブスでなけりゃな』

『ああ。好きな娘は別にいるけど、そこそこのお前ともセックスしたいって感じ?』

『ああそうだ。オスガキを本気にさせたところで清十郎にストーキングさせる。佳澄がそれを怖がって護身用に色々買い込むんだ。オスガキは何にも知らないだろうから、その中に自作銃のパーツや爆弾の材料が紛れてても気づかない。ある程度ため込んだところで佳澄は清十郎を選ぶ。その時は肉体関係になっているのが望ましいが、ま、そうでなくてもいい。手で抜く位はしてやれ』

『キモイな。そんでもって私はやられ損ってわけ?』

『少し我慢してくれ。上手く言ったら私が可愛がってやる』

『本当? もしかして、一晩中甘えていい』

『いい。私も佳澄を堪能したいしな』

『わかった。頑張るよ』

『清十郎の説得は私に任せな』


 彩花様がPCを操作し接続が切れたようだ。アプリケーションが閉じられ、越ケ浜佳澄のスマホ画面が閉じた。


※『どきメモ』……ちょっとエッチな描写がある美少女ゲーム。正式名は『どきどきメモリアル』。シリーズ十作目の『どきどきメモリアル10☆ハッピーコールは誰のもの?』が好評発売中。主人公(男性)が、十人のヒロインを攻略する。濃厚なキスシーやベッドで抱き合ったりするシーン、朝チュンなどの間接的な描写はある。R15です。もちろん、架空の作品ですよ。アマゾンで探しても絶対に見つかりません。


※ハッキングは犯罪です。皆様方に置かれましては、決して真似しないようお願いします。具体的な方法に関しては絶対に公表は致しませんのでご理解いただけますようお願いします。

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