第27話 創造

  ナナフシの小枝に似たり姿見て

      創造の業 しばしたたえん

 

「ランボルギーニだ。カッコいい」

男子が騒ぐ。遠足で来ていた森林公園に次から次へとスポーツカーがやって来る。

途中、先生の話を聞くために座る。

カーブを凄い勢いで車が走る。

ミウラだ、カウンタックだとうるさい。

その時、気配を感じた。何かが動いている。

小枝だ。風に吹かれている動きではない。

ゆっくり歩いている。車に気を取られていて誰も気が付かない。

私は初めて見るこの小枝に悲鳴を上げた。

男子の一人が私の悲鳴を聞いて、小枝を指差し、ナナフシだと言った。

あまりにも小枝にそっくりだ。擬態虫。

 

学んだばかりの進化論に疑問を持つ。

敵から身を守るために進化したという。

葉っぱや枝に似せる脳があるなら、他の生き物になればいいのに。

人間は猿から進化した。ならばなぜまだ猿が動物園にいるのか。


色んな疑問が湧く。

月のワグマの胸にある三日月は空の月と同じ形だ。

毒あるものは、カエルも蛇もキノコも派手な赤や黄色だ。

誰かが近づくなと警告しているのではないか。


人間は黄色と黒の組み合わせに危険を感じるらしい。

スズメバチや虎を本能で避ける。

だから踏切も同じ配色なのか?


黄金率、黄金比が生物に見られ、花びらの枚数はフィボナッチ数だという。


思いきって先生に聞いてみる。

「宇宙の造りを見ると不思議ですね。半分の長さの鼻を持つ象の化石がない。本当に進化したんでしょうか?」

進化論を教えてテストや高校受験に備えさせていた矢先の質問。

おかしな生徒に捕まったと思っただろう。

受験のために我慢したが、創造論の方が妄想僻のある私にしっくりきた。

風の抵抗を減らすため、フグに真似て造った車があるという。

「お母さん、私は何で人なの? 誰が人になるように作ったの?」

「やだやぁこの子は。変なこと聞いて」

六才の頃から変わっていた。

 

 

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