第18話 倉のない雀

  倉持たぬ 雀 偉いと ちっぽけな

         悩みの種を 蒔かずに 捨てる

 

 夫が失業した。働くべきだが臨月だった。

蓄えが少しあったので、出産費用の心配はなかった。

でも、もしずっと仕事がなかったら?お産も近いせいか、段々不安になる。

ミルク代やオムツは買えるのだろうか。

返却される履歴書をみると落ち込んだ。

 

子育てそのものも不安だ。

「昔の人は畑で産んだ。今は入院してベッドの上で産めるんだ。贅沢だ」

少しでも不安を口にすると、父のゲキがとぶ。

夫が失業したことは口が避けても言えない。

母は、泣くことも許してくれない人だ。


親に頼れない人は、普通、育児書に頼る。

私は、ここで野生の王国を思い出し、動物達の生活を思い巡らした。

ライオンはメスが狩りをする。雄に頼らない。

産んだらすぐに働く覚悟を持つことができた。

猿のぺちゃんこオッパイでも乳が出る。

ミルクを買えなくてもなんとか母乳で乗り越えてやる。

犬や猫は手足が使えないのに、赤ちゃんの排泄を助ける。

私は五体満足だ。何の不足があろう。

すずめは、その日暮らしだ。餌を蓄えないのに、毎日食べている。

私もなんとかなる。動物たちに励まされた。

悩みが吹き飛んだ。人と違う思考回路に感謝した。

   

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