第14話 こだわり

  トビがタカ 生むわけないと知りつつも

          熱心に見る 教育チラシ


「スイカはこの切り方だと食べた気がしない。リンゴは丸ごと剥かないで」

「じゃあ、自分で剥きなさい」

 よく果物のことで母に反抗した。

 他の事なら気にならないのに、

 スイカはスマイルカットでなくては食べなかった。

 自分でも何でこだわるのか分からない。


「先生、これは丸にしていいんですか?」

 中学校1年生、初めての英語の単語テスト。

 隣同士で、答え合わせをしていたとき、

 私の答案用紙の採点をする子が、先生に聞く。

 スペル完璧に書けたはずなのに。

 私は少し不安になる。先生の眉間にシワがよった。


「こんなの初めて見た。う~ん」 

 迷っている。

 girl, boy, flowerなど昨日頭に入れた。

「まあ、特別に正解にしましょう」

 先生が苦笑いをした。Girl. 最初のスペルは大文字、

 最後にピリオドがついている。

 20の単語が全てそうだ。

 英語の先生がそう教えてくれた。

 確かにそう言った。

 書き出しは大文字で最後にピリオドを打つのだと教えたではないか。

 単語テストでそんな書き方をする生徒に初めて会ったと嫌みを言われた。

 私のこだわり。


 書き取りノートに花丸をつけていた小学生の担任にも同じ事を言われた。

 父はちち 母ははは  父母はフボ

 国はくに 家はいえ  国家はコッカ

 となりのふりがなを書く行を見て驚いてた。

 音読みはカタカナ、訓読みはひらがなでふってある。私のこだわり。


 母は嘆いていた。

 どんなに教育のために、お金をかけても、この子はおかしいと。

 熱心に見る教育チラシには、こだわりを直し、

 正常な思考にする教材などなかった。


    

 

 



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