第12話 ブラックペインティング
今日もまた笑みをふりまき生きずらく
ゴヤの絵浸り ゼロに戻すに
母は真面目な人だった。
3つ年上の従姉に敬語を使わないと叱られた。
9才の時だ。
忘れ物をした友達が、昼休みに電話をかけて親に届けさせる。
私も10円借りて母に電話した。
「忘れた方が悪い」
ガチャンと切られた。
それから忘れ物が出来ない子供になった。
生活委員とか、福祉委員、学級委員などやりたくもない委員を押し付けられた。理由は真面目だから。
見るテレビ番組も全て母に決められた。
山口百恵さんが流行りの歌を歌い出すとテレビを消された。
恋愛ドラマなどもっての外だ。
次の日の皆の会話に入れず孤独だった。
母は教材費にお金をかけた。
世界文学全集と百科事典、英語教材。
娯楽はオセロゲームとトランプくらい。
面白味のない子供。
目立たない根暗でいなければ親に愛されない。
友達に笑顔で接していても、本当の自分を知って欲しい。
本当は責任感もない薄情な人間なのだ。
百科事典の付録に世界の名画がある。
ルノワール、モネ、ゴッホなど明るい絵。
天使の絵。イエスキリストの絵。ビーナス。
ゴヤの絵に魅了された。
決して美しい裸体ではない。
我が子を喰らうサトゥルヌス。
なぜか怖いというより、落ち着いた。
ゴヤが原因不明の病で聴覚を失った時の絵。
孤独、恐怖、社会的疎外感をぶつけたような絵。
ブラックペインティングに癒された私の心はきっと悲鳴をあげていたのだろう。
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