第7話 リスカ&オーバードース

  真実の愛が欲しいとリスカして

  答えもらえずオーバードース

  

 「あんたなんか生まなきゃよかった」

  たとえ、本気で言ってないとしても

  思い出す度、壊れそうだった。

  

 「結婚は考えていない」

  覚悟していても、現実にその言葉を聞くと母の言葉

  と重なって、生きる気力を失う。

  

  ただ、誰かに愛されたい。ただ、誰かを愛したい。

  アイデンティティの確立。

  そんな難しい言葉を知らない頃、壊れそうになると、

  誰に教わったわけでもなく刃物を白い腕に当てる。

  死ぬ気なんてない。

  カッターナイフでスーと切ると、血がにじむ。

 

 「あんたなんか生まなきゃよかった」

  またスーと切る。少し痛い。

  感情の痛みが消える。

  壊れそうな時、血を見ると落ち着いた。

  死ぬ気はない。

  明日も屍として生きるための儀式なのだから。

  それが終わると何事もなかったように眠りにつける。 

  誰にも愛されない。

  問いかけたわけではないのに自分で答えを出す。

  瓶詰めの薬と赤ワイン。とにかく吐く。

 

  リスカは生きるための行為。

  オーバードースは死ぬための行為。

  どちらも経験すると、苦しんでいる人の心の叫び

  が聞こえるようになる。

  立ち直れたのは医者でも恋人でも、

  まして親の愛情でもない。

  私の前に、太宰がいた。文学があった。知識があった。


  なぜ何度も切り、何度も吐くのか、

  あらゆるものを読みあさった。

     

    

  アイデンティティの確立。人間だけが持つものだ。

     

  思考を働かせ、毛穴からでも毒を吐け。

  

  私は、私を生きる。

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