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 魔法学校には専属のカウンセラーがいる。訓練を積んでも芽が出ない生徒はそこで魔法に通じたカウンセラーの診断を受け、アドバイスをもらうのだ。


「魔法の才能が大きく二つに分けられることは知ってるわね?」


「はい。身体的な才能と心理的な才能ですよね」


「そう。魔法の力の源……分かりやすくいえば魔力とかMPになるのかしら……とにかくそれは純粋に身体的な才能であることが近年の研究で分かってるわ。スカウトはこの魔力……いわば魔法資源を嗅ぎ取ってスカウトする。けれど、スカウトされた少女のすべてが魔法を使えるようになるわけじゃない。強大な魔力を持ちながら、それを有効に使えないままやめてった魔法少女もわたしはたくさん見てきた。問題になってくるのは心理的な才能なの。これはいわば世界をどう見るかってところが大きいのね。その辺は授業でも習ったでしょ?」


「はい」


「あなたは同期生の中でも平均以上の魔力を持っている。あとはそれを適切なやり方で解き放つだけなんだけど、それをうまく指導できる人がいないのが現状ってことね」


「何がいけないんでしょう」


「そうね、心理テストの結果を見るに、あなたは外界に対する信頼感が薄いと言うのかな、内にこもっていろいろと考え込んじゃうタイプみたいね。魔法の現象っていうのは言っちゃなんだけど、純粋に即物的な代物なの。だから、そこに『意味』ってノイズが入るとたちまち安定しなくなる。俗なイメージで言うと左脳じゃなくて右脳で行使する感じ? だから、あなたみたいにいろいろ考え込んじゃうタイプは能力の開発に苦労することが多いわね」


「どうすればいいんでしょうか」


「そうね、とりあえずいまからでもできることがひとつだけあるわ」


「なんですか」


「小難しく考える頭をストップさせて。見たものを解釈しないで。自分の気持ちを疑わないで。あるものをただあるがままに受け入れるの。そして願いなさい。ただ一心に願いなさい」 

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