第20話 ようかん
中島さん『寺野くん!寺野くん!』
寺野くん『な、何?テンション高いね…』
僕の名前は寺野かずお、いたって普通の男子高校生です。
今日も隣の席の中島さんは僕に疑問を投げかけてきます…
中島さん『寺野くん!【ようかん】って漢字で書ける?』
寺野くん『あー…確か羊っていう漢字が入ってるんだよね?』
中島さん『そうなの!【羊羹】って書くの!
それでね、なんで羊羹って和菓子なのに羊っていう字が入ってるのかな?
って思って昨日調べてみたの!』
寺野くん『そういえば何で羊なんだろうね?』
中島さん『そう!で、調べてみたら
元々は羊羹って中国で作られてた羊のスープなんだって!
それが日本に伝わって、いつの間にか和菓子になってたらしいよ!』
寺野くん『へー、そうなんだ。名前の由来とかは知らなかったなぁ』
中島さん『ゼリーは?プリンは?』
寺野くん『はい?』
中島さん『ゼリーとかプリンとかも羊羹と同じような感じの食べ物なのに、
カタカナで書いてるじゃん!漢字じゃないじゃん!』
寺野くん『(…また変なこと言いだした…)』
中島さん『寺野くん!これはチャンスだよ!
ゼリーとかプリンとかを漢字にして、国に提出して登録しようよ!
私たちが一番乗りだよ!』
寺野くん『え、えーと、ゼリーとかプリンとかは海外の食べ物で、
もう漢字にする必要がないんじゃないかな?なんで漢字にするの…?』
中島さん『羊羹だって中国から来たんだよ!中国って海外じゃん!』
寺野くん『そ、そうだけど…ゼリーとかプリンとか、
もうカタカナで書いてある商品を無理やり漢字にしたら、
ややこしくなるだけじゃないかなぁ?』
中島さん『だってここは日本なんだよ!
日本で売られてる商品なのに漢字じゃないのはおかしくない?
ぜんぶ漢字にするべきなんだよ!』
寺野くん『そんなこといったら日本はカタカナだらけだよ!
コーラとかハンバーガーだってカタカナだし、
今からカタカナを全部、漢字にするのは大変だよ!』
中島さん『……!』
寺野くん『(や、やばい、怒ってる?)』
中島さん『…ゼリーの漢字を発表します』
寺野くん『ど、どうぞ(考えてきてたのか…)』
中島さんがカバンから習字で書かれた紙を取り出して言いました。
中島さん『ジャーン!【贅痢胃】⇦だよ!』
寺野くん『えっ?贅肉の【贅】に下痢の【痢】?
それに胃をつなげてゼリーって読むの?
ゼリーが美味しそうに見えなくなっちゃうよ!』
中島さん『……‼』
寺野くん『(また黙っちゃった…)』
中島さん『……続いてプリンの漢字を発表します』
寺野くん『は、はい、どうぞ』
中島さん『ジャーン!【腐隣】⇦です!』
寺野くん『ちょ、ちょっと!これも何か漢字が嫌だよ!
隣が腐るって書いてプリンなの?なんでこの漢字を選んだの?
他の漢字の方が良かったんじゃない?』
中島さん『豆腐だって腐るって書くからいいかな?って思ったんだけど…』
寺野くん『そ、そうだけど…で、このゼリーとプリンを漢字にしたものを
国に提出するつもりだったの?』
中島さん『うん。寺野くんだったら協力してくれるかな?って思って』
寺野くん『…中島さん、この中島さんが書いた漢字で書かれた
【贅痢胃】⇦ゼリーと【腐隣】⇦プリンが
コンビニで売られてたら、買う?』
中島さん『面白いから買う!』
寺野くん『(あぁ、説得できない…)』
中島さん『あとね!ところてんも漢字じゃないでしょ?
だから、ところてんの漢字も考えてきたの!
見て見て!ほら!【処天】って書くの!カッコよくない?』
寺野くん『え?たしか、ところてんは
漢字で【心太】って書くんじゃなかったかなぁ?
クイズ番組で見たことあるよ』
中島さん『……‼』
寺野くん『え、えーと』
中島さん『……』
寺野くん『……』
中島さん『さて、と…』
寺野くん『え?な、何?』
中島さん『寺野くん、次の授業は体育館だよ、移動しなきゃ!』
寺野くん『あ、うん、そうだね…』
その後、中島さんは羊羹の話をすることはなかったとさ。
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