第18話 桃尻


中島さん『私のお尻って安定してないかな?』

 

寺野くん『な、何ですって?』


 

 

 

 

僕の名前は寺野かずお、普通の男子高校生です。

隣の席の中島さんが、また何やら変な事を言い始めました…


 

 

 

 

中島さん『私のお尻って安定してないと思う?』

 

寺野くん『お、お尻が安定?どういうことなの?』

 

中島さん『私のお尻って落ち着きがないと思う?』

 

寺野くん『えぇ?お尻が落ち着きがない?意味がわからないよ!』

 

中島さん『じゃあ、私のお尻の形って、とがっているのかな…』

 

寺野くん『何なの!さっきからお尻お尻って!

     何で中島さんは自分のお尻に疑問を感じているの?まず説明してよ!』

 

中島さん『うーん、私のお尻ってそんなに変なお尻かなぁ?』

 

寺野くん『(だめだ、全然説明してくれない…)』

 

中島さん『自分では自分のお尻って見えないから、

     私、自分のお尻がどういう形で、

     どういう状態なんだかわからないんだよね…』

 

寺野くん『ちょっと中島さん!僕の話も聞いてよ!』

 

中島さん『あ!そうだ!寺野くん!私のお尻を見てくれない?』

 

寺野くん『な、何ですって?』

 

中島さん『お尻!私のお尻が変じゃないかを見て欲しいの!

     私のお尻を見て気付いたことがあったら

     何でもいいから教えてほしいの!』

 

寺野くん『な、中島さんのお尻を?僕が見るの?』

 

中島さん『そう!ちょっと待ってて、着替えるから』

 

寺野くん『え?え?着替えるって、ここは教室だよ?クラスの皆もいるし!』



 

 

 

 

中島さんはいきなり制服とスカートを脱ぎ始めようとしたので

寺野くんはあわてて中島さんが制服を脱ごうとするのを制止しました!


 

 

 


 

中島さん『何で止めるの!寺野くんに私のお尻を見てもらいたいのに!』

 

寺野くん『あ、あのねぇ中島さん、

     中島さんはもう高校生で大人な体つきの女性なんだから、

     少しは恥ずかしいって気持ちを持たなきゃダメだよ…』

 

中島さん『ジャージに着替えるだけだよ?』

 

寺野くん『みんなが見てるでしょ?

     どうしてもジャージに着替えたいんだったら

     女子トイレとか誰も見てない所で着替えようよ!』

 

中島さん『うーん、わかった。めんどくさいなぁ…』

 

 

 

 

 

 

中島さんはだらだらと教室を出ていき、女子トイレで着替えて戻ってきました。

教室に戻ってきた中島さんは学校指定のピンク色のジャージを着ていました…

 

 

 

 

 

 

中島さん『ただいまー』

 

寺野くん『お、おかえり…

     中島さんだけピンクのジャージ着てるのが凄い違和感なんだけど…』

 

中島さん『まぁともかく、寺野くん!私のお尻を見てよ!』

 

寺野くん『う、うん。状況は全く理解できてないけど…

     えーと、僕が中島さんのお尻を見て、

     何か気付いたことがあれば言えばいいんだね?』

 

中島さん『そうです!じゃあ見てみて!私のお尻!』

 

 

 

 

 

 

中島さんは寺野くんに向かってお尻を突き出して見せ始めました。

寺野くんは中島さんのお尻に顔を近づけて、お尻をジーッと観察しました。

教室にいる他の生徒は『また何かやってる』といった感じで無関心でした…

 

 

 

 

 

 

寺野くん『ジーッ…(な、何なんだこの状況は…)』

 

中島さん『どう?私のお尻って、変?』

 

寺野くん『う、うーん。僕が今、中島さんのお尻を見る限り、変な所はないよ?』

 

中島さん『えー?ちゃんと見てる?ほらほら?』

 

寺野くん『ちょ、ちょっと中島さん!僕の顔にお尻を近づけて来ないでよ!』

 

中島さん『あはは!お尻ふーりふーり!』

 

寺野くん『はい!もう終わり!別に中島さんのお尻は変じゃありません!』

 

中島さん『ぶー!で、私のお尻見てどう思った?』

 

寺野くん『どう思ったって言われても…

     女の子のお尻なんてジロジロ見たことないから…

     別に中島さんのお尻に変わった所は無いと思うよ』

 

中島さん『私のお尻、【桃尻】だった?』

 

寺野くん『え?桃尻?中島さんがピンクのジャージ着てるから?』

 

中島さん『違うよ!昨日お母さんに【桃みたいなお尻】って言われたの!』

 

寺野くん『な、なにそれ?

     お母さんに【桃みたいなお尻】って言われたのが気になって

     中島さんは僕にお尻を見せてきてたの?』

 

中島さん『うん。だって他に頼める人いないし、

     私が桃尻なのか確認してもらいたかったんだもん』

 

寺野くん『【桃尻】っていうのがよくわかんないけど…

     まぁ中島さんのお母さんが言った桃尻っていうのは

     良い形のお尻っていう事なんじゃないの?』

 

中島さん『違うよ!【桃尻】の意味を昨日ネットで調べたら、

     桃尻っていうのは落ち着きがないとか、

     安定してないっていう意味なんだって!』

 

 

 

 

 

 

 

・もも‐じり【桃尻】


〘名〙 (桃の果実の尻(実際は頭)がとがってすわりの悪いところから)

① 馬に乗るのがへたで、尻が鞍の上に安定しないこと。また、そのような腰つき。

② 尻をもじもじさせ、座に落ち着かないこと。落ち着きなく体を動かすこと。

③ 一つの場所、一つの仕事に落ち着いていることのできないこと。また、その人。

 

                        精選版 日本国語大辞典より

 

 

 

 

 

 

寺野くん『へぇ~、桃尻ってそういう意味なんだね』

 

中島さん『だから私のお尻って、安定していない、

     落ち着きがないお尻、っていう意味なのかと思って…』

 

寺野くん『中島さんのお母さんは【桃みたいなお尻】って言ったんでしょ?

     たぶん桃尻の意味を知らないで言ってただけだと思うけどなぁ』

 

中島さん『そういえば確かに昨日お母さんは【桃尻】じゃなくて

     【桃みたいなお尻】って言ってた…』

 

寺野くん『ほらね、お母さんは中島さんのお尻を褒めただけなんだよ』

 

中島さん『そうなんだ!でも今度は【桃みたいなお尻】って

     どんなお尻なのかが気になるなぁ』

 

寺野くん『あはは、桃みたいに形の良いお尻って事なんじゃないの?』

 

中島さん『よし!寺野くん!私のお尻が桃みたいな形をしているか見てみて‼

     ちょっと待ってね、今ジャージ脱ぐから…』

 

寺野くん『だ、だから教室で服を脱いじゃダメだってば‼』

 


 

 

 

 

 

その後、中島さんは寺野くんに何度もお尻を見せようとしましたが、

そのたびに寺野くんが中島さんを制止して、

中島さんが脱ごうとするのを止めていました…


中島さんには『恥ずかしい』という感情が無いのでしょうか…?とても心配です…

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