第17話 くし


中島さん『【串】っていう漢字おかしくない?』


 

 

 

 

僕の名前は寺野かずお、普通の男子高校生です。

今日の中島さんは【串】という漢字に疑問があるみたいです。


 

 

 

 

中島さん『串っていう漢字はおかしいよ』

 

寺野くん『ま、また漢字の話?串っていう漢字の何がおかしいの?』

 

中島さん『寺野くんは串っていう漢字を見ておかしいって思わないの?』

 

寺野くん『串っていう漢字の形の事?』

 

中島さん『そう!』

 

寺野くん『うーん、【串】⇦っていう漢字は、

     例えば串カツみたいな食べ物で例えると、

     真ん中の棒で食べ物の具材を突き刺してるように見えるから、

     他の漢字の成り立ちと比べたらわかりやすいと思うんだけど…』

 

中島さん『串カツの串って木の棒の部分でしょ?』

 

寺野くん『そ、そうだね…』

 

中島さん『【串】⇦っていう漢字の口2つはカツって事でしょ?』

 

寺野くん『ま、まぁ説明の流れからするとそうなるけど…』

 

中島さん『だったら【串】⇦っていう漢字の口2ついらないじゃん!

     木の串の部分は真ん中の棒だけなんだから』

 

寺野くん『それじゃただの棒みたいな漢字になっちゃうよ!』

 

中島さん『そうだよ、【 | 】⇦これでいいじゃん』

 

寺野くん『それだと数字の【1】とか英語の【Ⅰ】とかと

     見分けがつかなくなっちゃうよ!』

 

中島さん『なんで?寺野くんは【串】っていう漢字が

     カツを2つ突き刺してる絵みたいな漢字のままで良いっていうの?』

 

寺野くん『い、いや中島さんの理屈もわからない訳でもないけど、

     ややこしくなっちゃうから

     そのままでも良いんじゃない?って言ってるだけだよ!』

 

中島さん『じゃあ【中】は?』

 

寺野くん『え?』

 

中島さん『【中】⇦っていう漢字は串カツのカツが1つだけ刺さってる

     絵みたいな漢字っていう事になるんじゃないの?』

 

寺野くん『(な、何というめんどくさい発想力なんだろう…)』

 

中島さん『【中】⇦っていう漢字はカツが1つで、

     【串】⇦っていう漢字はカツが2つ、

     くしに刺さってる漢字っていう事になるけどOK?』

 

寺野くん『OKじゃないよ!【中】っていう漢字は別の関係ない漢字だし、

     意味も全然違ってきちゃうじゃん!串カツから離れようよ!』

 

中島さん『まだあります!【申】⇦っていう漢字も

     【日】っていう漢字を串で刺してる絵、っていう事になるよ!』

 

寺野くん『よ、よく思いつくね…』

 

中島さん『【甲】⇦っていう漢字はリンゴ飴みたいに見えるし!』

 

寺野くん『(発想力が豊かだなぁ…)』

 

中島さん『【由】⇦っていう漢字はクリスマスケーキみたいに見えるよ!』

 

寺野くん『あー、ロウソク1本だけ刺してるケーキに見えないこともないけど…』

 

中島さん『【干】⇦は屋根の上のアンテナ!』

 

寺野くん『あぁ、見える見える』

 

中島さん『【土】【士】⇦この二つは十字架のお墓みたいに見える!』

 

寺野くん『(串はどこいった?)』

 

中島さん『他にも【車・東・木・王・平・羊・半・来・米・市】

     このあたりの漢字は全部、棒が刺さってるみたいに見える漢字、

     っていう事になっちゃうよ!』

 

寺野くん『漢字に詳しいなぁ…まぁ話の流れからするとそうなっちゃうけど…

     そもそも漢字を形とか絵みたいに見てるから

     全部が変に思えてきちゃうんじゃないの?』

 

中島さん『うーん、でも漢字の形が変だと気になっちゃうんだよね』

 

寺野くん『でも面白い考え方だとは思うけどね』

 

中島さん『でね、【くし】って別のやつもあるでしょ?』

 

寺野くん『別のやつ?』

 

中島さん『そう!髪をブラッシングするのに使うのも【くし】でしょ?』

 

寺野くん『あー、その【くし】もあったね』

 

中島さん『髪に使う【くし】の漢字は【櫛】⇦こんなオシャレな漢字なんだよ!』

 

寺野くん『へぇ、【串】と【櫛】かぁ、

     同じ【くし】なのに漢字にすると全然ちがうんだね』

 

中島さん『この2つの漢字を見比べると【串】っていう漢字は

     テキトーに付けられた漢字みたいに思えてきちゃうよ』

 

寺野くん『ま、まぁ、ちょっと簡単に造られた漢字、っていう風になっちゃうね…』

 

中島さん『あと【櫛】を髪留めとして使ったら

     呼び方が【かんざし】っていう名前になるのも意味がわからない』

 

寺野くん『へぇ、僕は男だからよくわからないけど

     かんざしって必殺仕事人が武器として使ってる

     大きい針みたいなやつかと思ってたんだけど、違うんだ?』

 

中島さん『うん、かんざしって言ったら大きい針みたいなのが一般的だけど、

     私のお母さんが使ってたのは【櫛】の形だったんだよね、

     それも【かんざし】って呼ぶらしいよ』

 

寺野くん『ふ~ん、中島さんもかんざしが似合いそうだよね』

 

中島さん『わたしはそんなオシャレな髪飾りなんていらないもん、

     木の串を頭に刺すよ!』

 

寺野くん『そ、それじゃただのアホだよ…』

 

中島さん『だって同じ【くし】なんだから髪留めとして使えれば一緒でしょ?

     私は木の串を頭にさして髪型をキメてやるんだ!』

 

寺野くん『(本当にやるんだろうなぁ…)』

 

 


 

 

 

 

その次の日、中島さんは頭に大量の木の串を刺して登校してきました…

寺野くんがあわてて中島さんの頭から木の串を抜いて事態はおさまりましたとさ。

 

補足説明として、中島さんはアホの子ではありません

超スーパー天然な思い込みをしてしまう女の子なのです。ガンバレ!寺野くん!

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