第11話 カバ
僕の名前は寺野かずお、どこにでもいる男子高校生です。
午前の授業が終わり、今は昼休みのお弁当タイムです。
中島さん『……お腹空いた』
寺野くん『そうだねー僕もお腹ペコペコだよ』
中島さん『……お腹空いたよ…』
寺野くん『う、うん、それなら早くお弁当食べようよ』
中島さん『…寺野くんは今日もお弁当…?』
寺野くん『そ、そうだよ、何かテンション低いね、中島さんのお弁当は?』
中島さん『…持ってきてない』
寺野くん『え?中島さん、今日はお弁当持ってきてないの?』
中島さん『…昨日からお母さん旅行に行ってて、
お弁当作ってくれる人が誰もいなかったの…』
寺野くん『そうなんだ、お父さんはお弁当とか作ってくれないの?』
中島さん『お父さんは料理とか作れないの、私も作れないけど…
だから昨日の夜から何も食べてないの…』
寺野くん『そ、そうなんだ…良かったら僕のお弁当、一緒に食べる?』
中島さん『え?いいの?』
寺野くん『いいよ、お腹空いてて元気がない中島さんなんか見たくないもん』
中島さん『……寺野くんが神様に見えるよ…』
寺野くん『そ、そんな大げさな…それじゃあ早くお弁当、食べようよ』
中島さん『うん!うわぁ!今日の寺野くんのお弁当はハンバーグだね!』
寺野くん『うん、あ、中島さん用の箸がないや』
中島さん『私、お箸持ってるよ!』
寺野くん『(なんで箸だけ持ってるんだろう…)』
中島さん『それじゃ遠慮なく!モグモグ…美味しい!
寺野くんのお弁当のハンバーグ、肉汁たっぷりで超おいしいね!』
寺野くん『お、美味しそうに食べるね』
中島さん『昨日から何も食べてなかったから
よけいにハンバーグが美味しく感じるんだよ‼
寺野くんの家って毎日こんなに美味しいご飯が出てくるの?』
寺野くん『そうでもないけど…昨日の晩ご飯はウナギのかば焼きだったかな』
中島さん『え?』
寺野くん『え?だから昨日はウナギのかば焼きを食べたよ』
中島さんが手に持っていた箸が『カランカラン』と音を立てて床に落ちた
中島さん『…か、かば焼き?』
寺野くん『う、うん、かば焼き食べたけど…』
中島さん『て、寺野くん、かば焼き食べたの?』
寺野くん『た、食べたけど…』
中島さん『…カバを焼いて食べたっていう事?』
寺野くん『ち、違うよ!かば焼きを食べたんだよ!』
中島さん『だから!動物のカバを焼いて食べたんでしょ?』
寺野くん『違うよ!ウナギのかば焼きだよ!』
中島さん『ウナギ?ウナギを食べたの?カバを食べたの?どっちなの?』
寺野くん『ウナギを食べたんだよ!』
中島さん『じゃあ何でさっきカバを食べたって言ったの?』
寺野くん『カバを食べたんじゃなくて!かば焼きを食べたんだよ!』
中島さん『やっぱりカバを焼いて食べたんじゃん!カバを食べちゃダメだよ!』
寺野くん『カバは食べてないよ!』
中島さん『も、もしかして、さっき食べたハンバーグもカバの肉なんじゃ…
何だかハンバーグの肉の色も赤い汗みたいな色だったし…』
寺野くん『違うよ!この弁当のハンバーグは普通のハンバーグだよ!』
中島さん『でも昨日の夜はカバ焼き食べたんでしょ?』
寺野くん『かば焼きはカバじゃないよ!ウナギだよ!』
中島さん『どういうことなの?ウナギとカバをどっちも食べたって事なの?』
寺野くん『ウナギしか食べてないよ!』
中島さん『カバ焼き食べたって言ったじゃん!カバの話はどこにいったの?』
寺野くん『カバの話なんて最初からしてないよ!ウナギのかば焼き!』
中島さん『おかしいよ!寺野くんがカバを焼いて食べる話をし始めたのに、
何で寺野くんはウナギの話をしようとするの?』
寺野くん『だから!ウナギのかば焼きはカバじゃないって…』
中島さん『もういい!』
寺野くん『な、中島さん?』
中島さん『……寺野くん、私が動物のこと大好きなの知ってるよね?』
寺野くん『う、うん、この前も動物のテレビ番組の話してたもんね…』
中島さん『私はね、そういう動物の映像を見てる時が本当に幸せなの、
動物を見てると癒されるし、動物の意外な生態を知るとビックリするし、
アフリカとかの動物たちの弱肉強食の世界を見ていると
本当に感動に連続なの!』
寺野くん『そ、そう』
中島さん『だからアフリカの動物も大好きなの!
カバはアフリカに生息してる動物で、
学名も【ヒポポタマス】っていう名前で何か可愛い名前だし、
とってもやさしい性格で、小さい動物は守るけど
大きな動物には戦いを挑むほど勇敢な性格の動物なんだよ!』
寺野くん『う、うん。さすがに詳しいね…』
中島さん『だからカバのキャラクターとかも大好きなの!
イソジンのテレビCMのうがいしてるカバとか、
アンパンマンのカバオ君とか!』
寺野くん『じゃ、じゃあ、ムーミンとかも好きなの?』
中島さん『ムーミンはカバじゃないよ!ムーミントロールだよ!』
寺野くん『ム、ムーミントロール?』
中島さん『だから!寺野くんがカバの肉を食べたって聞いて本当にショックなの!』
寺野くん『だからカバは食べてないってば!』
中島さん『カバ焼き食べたって言ってたじゃん!』
寺野くん『違うよ!【かば焼き】はウナギの肉を開いて焼いた料理名で、
カバの肉じゃないの!ウナギの肉をかば焼きにしたっていうことなの!』
中島さん『……そうなの?』
寺野くん『そうだよ!やっと理解してもらえたよ…』
中島さん『じゃあなんでカバの事でこんなに言い争いになったの?』
寺野くん『な、中島さんのせいだよ!』
今日の寺野くんは頭がバカになりそうでしたとさ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます