第9話 やぎ
中島さん『私はヤギの生贄になるんだよ…』
寺野くん『……』
僕の名前は寺野かずお、いたって普通の男子高校生です。
隣の席の中島さんは今日もよくわからない話を僕に話してくるのでした…
中島さん『私はもう終わりだよ…』
寺野くん『ど、どうしたの?』
中島さん『…私はヤギに食べられちゃうの…』
寺野くん『ヤ、ヤギに食べられる?何それ?
また何か変な思い込みしてるんじゃないの?』
中島さん『思い込みじゃないよ!私はヤギに食べられちゃうんだよ!』
寺野くん『何があったの!説明してよ!』
中島さん『……昨日、家でテレビ見てたの』
寺野くん『え~と、昨日は何かテレビ番組あったっけ?』
中島さん『私が毎週見てる動物の番組にヤギが出てたの…』
寺野くん『そのヤギがどうかしたの?』
中島さん『…そのヤギが、超かわいかったの…』
寺野くん『かわいかった?そ、そう…』
中島さん『それでね、その番組に出てたヤギが超かわいかったから
ヤギの事についてネットで色々調べてみたの、
そしたらね!ヤギの悪魔の絵が出てきたの!』
寺野くん『あ~、ヤギはキリスト教とかでは
悪魔みたいな存在に例えられるんだよね、
ゲームとかでもヤギの悪魔のバケモノとか見たことあるよ、
その悪魔のヤギがどうしたの?』
中島さん『……え?どうしたって?』
寺野くん『いや、ネットで悪魔のヤギの画像を見たんでしょ?それでどうしたの?』
中島さん『別にどうもしないよ』
寺野くん『え?』
中島さん『話は以上ですけど』
寺野くん『え?ネットで悪魔のヤギの画像を見ただけ?
それで何で中島さんがヤギに食べられちゃうみたいな話になるの?』
中島さん『でもさ!そういうヤギの悪魔の絵があるってことは
誰かがそのヤギの悪魔を見て絵に描いたってことなんじゃないの?
ヤギの悪魔は実在するんだよ!
そのヤギの悪魔に私は仕返しされちゃうんだよ!』
寺野くん『実在しないよ!ヤギの悪魔は空想のバケモノだよ!
それに、仕返しされちゃうって何?ヤギに何かしたの?』
中島さん『……1ヶ月くらい前にジンギスカンを食べたの』
寺野くん『ジンギスカン?』
中島さん『私の家族で外食したときにジンギスカンを食べたの!
私がヤギの肉を食べちゃったから、
ヤギが悪魔になって私に仕返しに来るの!私は食べられちゃうんだよ!』
寺野くん『ジンギスカンってヤギじゃなくて羊の肉じゃなかったっけ?』
中島さん『そうだけど!ヤギだって漢字で書くと【山羊】って書くじゃん!
羊っていう漢字が入ってるじゃん!』
寺野くん『まぁ僕も山羊座だから山羊の漢字は何で【山の羊】って書くのかな?
って思ったことあるけど…』
中島さん『え?寺野くん山羊座なの?寺野くんも山羊の悪魔の手下なの?』
寺野くん『お、落ち着いてよ!僕は山羊座生まれなだけだよ!』
中島さん『違うの!もう嫌なの!ヤギって聞くだけで怖いの!
昨日もネットでヤギの事を調べてたら
ヤギの顔のアップの画像がたくさん出てきて…
ヤギの目って何か怖いんだよ!
他にもイカつい角のヤギの画像とかも出てきて…それに
お笑い芸人のサバンナの八木さんも一発ギャグばっかりだから嫌なの!
だからヤギが怖いイメージになっちゃったんだよ!
ヤギは悪魔なんだよ!』
寺野くん『(やっぱりただの思い込みじゃないか…)』
中島さん『今夜にも私の家にヤギの悪魔がやってくるんだよ…
今にも鈴の音が聞こえてきそうだよ…』
寺野くん『す、鈴の音?』
中島さん『そうだよ!ヤギってドラえもんみたいに首から鈴を下げてるじゃん!
首から鈴を下げた悪魔のヤギが私の家にやってくるんだよ!』
寺野くん『だ、大丈夫だよ家の玄関のカギをちゃんと閉めておけば
悪魔のヤギなんて家に入って来ないって…』
中島さん『ヤギを甘くみちゃダメだよ!
ヤギは崖を登れるくらい身体能力が高いんだよ!
2階の私の部屋にも簡単に登ってきちゃうよ!』
寺野くん『(中島さんの妄想を止める方法がわからない…)』
中島さん『そして私の部屋に入り込んできたヤギの悪魔は
私の部屋の漫画とか小説とかをムシャムシャ食べるんだよ…
ヤギの大好物は紙だから、私の部屋の卒業アルバムとか
数学の25点のテスト用紙とかも全部食べられちゃうよ…』
寺野くん『は、はは、(中島さん数学25点だったんだ…)』
中島さん『どうしよう…寺野くんの写真とかも食べられちゃうかも…』
寺野くん『え?僕の写真?なんで中島さんの部屋に僕の写真があるの?』
中島さん『あ…』
寺野くん『中島さんに僕の写真なんてあげたことあったっけ?』
中島さん『……』
寺野くん『えと、中島さん?』
中島さん『寺野くん…』
寺野くん『はい?』
中島さん『今度、一緒にプリクラ撮らない?』
寺野くん『え?う、うんいいよ!』
中島さん『……ふぅ』
寺野くん『(ヤギの悪魔の話はどうなったんだろう…)』
今日はめずらしく中島さんが話をごまかしていましたとさ。
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