第2話 目
中島さん『寺野くん…どうしよう…』
寺野くん『ど、どうしたの?』
僕の名前は寺野かずお、いたって普通の男子高校生です。
今日も中島さんは疑問に思うことがあるみたいです。
中島さん『私、どうしたらいいの…?』
寺野くん『な、何?なにかあったの?』
中島さん『寺野くん…』
寺野くん『な、何?どうしたの』
中島さん『私の目を見て…』
寺野くん『へ?あ、うん、め、目を見ればいいんだね…』
僕は中島さんの目をジーッと見た、
そのまましばらく見続けた…
寺野くん『……ジーッ…』
中島さん『……ジーッ…』
寺野くん『……も、もういいでしょ?
何か照れくさいよ!』
中島さん『何か気付いた?』
寺野くん『何かって言われても…
中島さんの目は別に普通だったよ?』
中島さん『それじゃダメだ!もう一回見て!』
寺野くん『何?なんなの、もう!』
中島さん『もっと近くで私の目を観察してみてよ!』
寺野くん『う、うん、わかったよ…』
中島さんが僕に顔を近づけてくる…
中島さんの吐息が僕の顔に当たる…
僕は息を止めて中島さんの目を見続けた…
中島さん『……ジーッ…』
寺野くん『………………』
中島さん『……どう?』
寺野くん『ぷはぁ!はぁ、はぁ、窒息するかと思った!』
中島さん『……? 何で息を止めてたの?』
寺野くん『な、中島さんの顔が近いから!
僕の息が
中島さんに当たらないようにしてたんだよ!
もう何なのコレ?』
中島さん『別に息なんか気にしないのに、
それより、
私の目を見て何か気付いたことある?』
寺野くん『え、えーと、
コンタクトレンズはしてないよね…?』
中島さん『してない!』
寺野くん『うーん、レーシックの手術をした…とか?』
中島さん『してないよ、私、視力いいもん』
寺野くん『……えーと、
な、中島さんの目は、綺麗だと思うよ…』
中島さん『そういうお世辞はいらないっす…』
寺野くん『す、すいません…
でも、それじゃ何なの?
中島さんの目は普通だよ?』
中島さん『お尻と頭はあった?』
寺野くん『な、なんですと?』
中島さん『お尻と頭!私の目に付いてる
【お尻】と【頭】はあった?』
寺野くん『(この子は何を言ってるんだ…?)』
中島さん『ねぇ?私の目にお尻と頭は付いてたかな?』
寺野くん『…つ、付いてないと思いますけど…』
中島さん『付いてるよ!目じり!目頭!』
寺野くん『……? ああ!そういうことか!』
中島さん『目の端の鼻に近い部分が目頭で、
その反対側が目じりでしょ?
…私の目にはお尻と頭が付いていたんだよ…』
寺野くん『なるほどね!オモシロイ言葉遊びだったよ!』
中島さん『言葉遊びじゃないよ!』
寺野くん『はい?』
中島さん『私の右目・左目の目頭は
【頭】だから鼻の方を向いてるんでしょ?
しかも右目・左目の目じりは【お尻】だから、
反対側にお尻を出してるんだよ!』
寺野くん『(この子は何を言ってるんだ? ~2回目)』
中島さん『わからない?それじゃ、
私の右目、左目にそれぞれ
【目玉のおやじ】が入ってる、
って考えてみて?』
寺野くん『えぇ…なんか気持ち悪い…』
中島さん『私の右目の目玉おやじは
頭を鼻の方に向けてるの、
そして目じりの部分でお尻を出してるの、
左目はその反対、左右対称の形になるね』
寺野くん『…ええと、つまり、目玉のおやじが
中島さんの顔の目頭と目じりの場所に居る、
っていう事?』
中島さん『そういう事になっちゃいますよね』
寺野くん『ならないよ!何なの?その発想は?』
中島さん『…そう考えると
【目頭が熱くなる】とか
【目頭を押さえる】っていうのは
目玉おやじの
頭痛や発熱の事だったんだよね…』
寺野くん『(この子は何を… ~3回目)』
中島さん『それに【目じりが下がる】は
目玉おやじのお尻が下がってくる事で、
【目じりの小じわ】は
目玉おやじのお尻のシワの事であって…』
寺野くん『さ、さっきから何を言ってるの?
本当に中島さんの目の中に目玉のおやじが
入っているみたいな話になってるけど…?』
中島さん『だって!
目じりと目頭っていう名前が付いてるじゃん!
お尻と頭がついてる目玉は
目玉のおやじ以外に思いつかないよ!』
寺野くん『それはただの目の部分の名称だから!
目玉おやじもいないって!』
中島さん『……名前を変えてほしい、』
寺野くん『な、名前を変える?』
中島さん『私の目の【目じり】と【目頭】の
呼び方を変えてほしい!
私の目にお尻と頭があるのが何か嫌なの!
目玉のおやじが嫌なの!』
寺野くん『ど、どうしろと…あ!でもちょっと待って…』
寺野くんはカバンから
生物の教科書を取り出して言いました。
寺野くん『ほら、この教科書に
人間の目の部位の名称が書いてあるよ、
目頭の別の呼び方は
【内眼角】っていう名前で、
目じりの別の呼び方は
【外眼角】っていうらしいよ、
これからはそう呼べばいいんじゃない?』
中島さん『…そうか、なるほど、その呼び方に変えれば、
私の目の中の
目玉のおやじが居なくなるのか…』
寺野くん『最初から目玉のおやじは居ないよ…』
中島さん『えへへ、ありがとう寺野くん!
昨日から目玉のおやじの事を
ずっと考えてて嫌だったんだ!
また助けてもらっちゃったね!』
寺野くん『そ、そうですか、それは良かったですね…』
中島さんはとてもすがすがしい顔をしていましたとさ。
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