泡の言葉を吐く魚
具合が悪くて昼寝をしていたら、夢を見た。
どうやらこれは現実ではないらしいとすぐに気づいた。
というのも、月の花のような白色と、藤の花のような紫の
わたしは、
逃れようとするが、駄目だった。膝から下はまるで動かない。わたしの身体の一部でいることを辞めてしまったのだろうかと思うほど、わたしの脚はびくともしなかった。脚が憂鬱の液体の所為で鉛に変化してしまったような、そんな
わたしはその恐怖の色をわたしの瞳に映さぬよう、つとめて冷静にきらめく魚に視線を移した。
その一匹のうつくしい魚はというと、おそらく何かを訴えかけようとして口を上下にぱくぱくと動かしている。うまく喋ることが出来ないのか、それとも呼吸がへたくそなのか、そのちいさな口からは不恰好に欠けた泡が二、三粒、
わたしは、その魚の言葉を聴かなくてはならないと思った。
何故そう思ったのかはわからない。
だが、わたしは何かに突き動かされるようにして器用に上半身だけをくねらせ、魚の
ちいさな口に触れるか触れまいかというところまでわたしの耳が接近すると、魚は、スウ、コクリ、と息を
こぽり。
うつくしい魚の吐いた泡が、わたしの耳をやわく撫ぜる。
「 さ よ う な ら 」
五文字。
うつくしい魚は、たった五文字の言葉を泡にして、途切れ途切れに吐きだしていた。その泡は泣き声を形にしたのかと思うほど
「 さ よ う な ら 」
ぱちん、と、役目を終えたと言わんばかりに泡がはじける音がした。
途端、わたしの脚が感覚を取り戻した。下を見れば、あの恐ろしい群青と白色と金色は見えなくなっていた。
そして一匹のうつくしい魚の姿も、わたしにはもう見えなかった。
目覚めると、わたしの体調はすっかり治ってしまっていた。
もしかして、あの魚がわたしの悪いところを持っていったのだろうか。
そう思うと、あの五文字の言葉が泡のようにして消えたのが、すこしだけ
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