【番外編・北方領土交渉について日本人の皆さんへ贈る手紙(日本人の安全のために)】

 二月七日は北方領土の日である。


https://www.sankei.com/politics/news/190207/plt1902070009-n1.html(産経新聞)

[記事タイトル] 首相、北方領土返還要求大会で日露交渉に決意 アピールで「不法占拠」消える

>また、大会で採択した「アピール」では、北方四島についてこれまで盛り込んでいた「不法に占拠」されたとの表現を使わなかった。

>首相らが北方領土の認識について慎重な発言を続けていることに配慮したとみられる。



https://mainichi.jp/articles/20190207/k00/00m/010/271000c(毎日新聞)

[記事タイトル] 「不法占拠」封印 対露交渉の進展優先 北方領土・大会アピール

>7日の北方領土返還要求全国大会(政府や民間団体など主催)で採択した大会アピールは、昨年までの「北方四島の返還実現を目指し行動を推し進める」との文言が消え、「不法占拠」との言葉もなかった。

>交渉相手のロシアへの刺激を避けると同時に、「2島返還プラスアルファ(+α)」での決着を探る政府の姿勢をにじませたものだ。



 『ロシアによる不法占拠』という表現が使われなかった。

 この理由は日ロ交渉が正念場を迎える今『ロシアを刺激したくないから』だという。


 我々日本人は条約を破られた。日ソ中立条約である。その直後に戦争を仕掛けられた。紛う事なき不法行為の結果北方領土が占領されたのだから、不法占拠、という表現こそが真実を現している。

 だというのに真実を口にしないとは!


 条約を破られただけではない。降伏を表明した後も我々日本人はソビエト連邦によってなお撃ち続けられ殺され続け、その後さらに極寒の地シベリアへと強制連行され、その地で強制労働させられた。その数二百万人。そのうち四十万人が死亡、紛う事なき大虐殺だった、という説すらある。


 なぜ我々日本人が『強硬姿勢を崩さないロシア』に配慮しなければならないのかさっぱり解らない。



 安倍晋三、この首相が「『日ソ共同宣言』に基づき日ロ間の領土問題を解決し平和条約を結ぶ」と言いだした。つまり四島一括返還ではなく「歯舞・色丹から」という方向性で動き出した、らしい。

 当初この動きを報道は『二島先行返還』と表現していたがいつの間にかこの表現は消え、『二島プラスαで妥結』にいつの間にか変わってしまっている。『先行』というこのことばはなぜ報道から消えているのか?

 だんだんと雲行きが怪しくなってきたというほかない。



 だが最も憂慮すべきは我々日本人だ。どうも日本人が『二島だけでも戻ってくればいいじゃないか』と考えている節がある。

 こんな事を言うとたいてい以下のような批判がやってくる。即ち、

「今までのやり方(四島一括返還要求)じゃひとつも戻って来なかったじゃないか!」と。

 七十年待って今さら急ぐ必要がどこにある? それについては「これから日本がもっと有利になる」、即ち「ロシア連邦がもっと不利になる」と言おう。だから「二島」程度で今ロシアとの妥結を急ぐ必要は無い、と。


 幸いなことに(と敢えて言う)アメリカ合衆国がロシア連邦に対しINF条約(中距離核戦力廃棄条約)破棄を通告した。これから先どれくらい続くか、アメリカ合衆国・ロシア連邦・中華人民共和国の間の核軍拡競争が熾烈を極めることだろう。

 こうした場合、真っ先に脱落するのがカネの無い国である。即ちロシア連邦がいの一番に核軍拡競争から脱落する。むろんロシア連邦が脱落したからといって中華人民共和国を的にするアメリカ合衆国が中距離核戦力の核軍拡を自分から止めるはずもなく、中華人民共和国の方もロシアがどうなろうとアメリカ合衆国に対抗するため中距離核戦力の増強を続ける。するとどうなるか? 中国とロシアの核軍事バランスが中国優位になりロシアが劣位になる。核兵器をたくさん持っているだけが取り柄のロシアだったのにその優位性が消えるのである。

 そして貧乏国が無理に核戦力の増強を続ければかつてのソビエト連邦の二の舞となるのは想像に難くない。国民生活は窮乏・疲弊し、国庫はカラになり国家破綻。ロシア連邦は軍事的のみならず経済的にも中華人民共和国に対しその立場が著しく弱くなる。

 あとは「島4つくらい返すから支援をくれ! 中国人に支配されるよりはマシだ!」とロシア人に言わせるよう日本は巧みに誘導すればいい。

 交渉事は相手の立場が弱いときにするものだ。今はまだロシア人はイキがる余裕があるようだから今は交渉の時ではない。

 INF条約(中距離核戦力廃棄条約)破棄というアメリカ合衆国の政策転換を日本の外交利益のために役立てることを考えるべきだ。

 なのに首相の安倍晋三ときたら————



 さてと、前置きがずいぶん長くなった。

 北方領土問題は〝地面の問題〟ではない。

「二島だけでも戻ってきて日本の面積が少しでも広くなれば御の字だ」、という価値観の問題ではない。

 そのことを日本人に解らせないといけない。中でも特に政治家には。その中でも特に首相の安倍晋三には。


 よく朝日新聞やら毎日新聞やらが〝日本と外国が対立するケース〟で、「外交によって解決しなければならない」と云う。

 まあ実際「戦争で解決しよう!」などと考える日本人はほぼいないだろうからこれはこれで正しい主張だと言える。


 ではその外交とはなんだろう?

 外国と話し合い、何ごとか合意する、ということである。


 もし外国と結んだ〝合意〟が片っ端から外国によって破られるようなことが起こったらどうだろう?

 外交で問題を解決するという手法になんらの効果も無いことになる。


 日本国の外務官僚諸君! 外交官として考えて頂きたいし答えて頂きたい。

 外国と結んだ約束を次々外国に破られるような事態になった場合、あなた方はその時どうやって外交をするというのか?

 なんらかの約束を外国と結んだとてそれはその場限りの一時的なもの。外国の都合でいつ反故にされるか解ったものではないとなった場合、外交は日本に安全や安心をもたらさない。日本人に安全や安心をもたらさない。

 もはや外交不能だ。外交で問題は解決しなくなる。


 そういう事態にならないためには日本との約束や合意を破った外国にきっちりペナルティーを支払わせることである。損をさせることである。

 ところが今の首相ときたらこれとはまったく正反対のことをやろうとしている。


 さて、ここからが具体的な話し、ロシア連邦についてだ。

 このロシア連邦という国の連中は『日ソ中立条約』という日本との間に結んだ条約を破っても平然としている。そして『日ソ中立条約』を破った結果日本の領土を占領するに到っている。つまり日本との約束を破って利益を得ている。

 そんな中、我らが(?)首相安倍晋三はこの『条約破りで得た利益』にお墨付きを与えようとしてる。安倍晋三だけじゃない。「二島返還でいいじゃないか」と考えている全ての日本人もまた同じくだ。

 ペナルティーを支払わせるどころか連中の得た不当な利益に〝公認〟のお墨付きを与えてこの後日本はどうやって外交で問題を解決できるというのか⁉



 ロシア連邦ばかりを叩いているのもフェアじゃない。故に他の国にも言及するが、日本との約束や合意を破っている国はロシア以外にもいる。

 大韓民国。

 この国は『日韓請求権協定』『日韓慰安婦合意』を破っている。

 こういう国にはきっちりペナルティーを支払わせ損をさせなければならない。



 それをしないとどうなるか?

 日本が、〝日本との約束を破って得た外国の利益〟を公認してしまったらどうなるか。

「日本との約束など破った方が得をする」と外国に判断され日本はそのように振る舞われるのである。


 かつて『日米修好通商条約』という不平等条約を結んでしまったらその後同様の条約をイギリスやフランスとも結ぶハメになった。結ぶと破るの違いこそあれひとたび日本が外国から不利益を呑まされれば次々と他の諸外国から同様の不利益を呑まされるという点において構図に違いは無い。日本とロシアの交渉を諸外国はじっと見ている。

 日本との条約・約束・合意を破って日本から奪った利益に日本が『その利益を認めよう』とやってしまったら、他の外国も間違いなく次々日本に襲いかかってくる。


 例えばこう言えば解りやすいだろう。

 ロシア連邦が日本との条約を破って得た利益を、他ならぬ日本政府が公認してしまった場合、中華人民共和国が温和しく日本との条約を守り続けるだろうか?


 また当のロシア連邦そのものも例外とはならない。ロシアが再び日本との条約を破る可能性すらも生じる。

 首相安倍晋三は「『日ロ平和条約』を結ぶ」と息巻いているが、ひとたびロシア人に「条約破りは利益になる」、と考えられてしまう外交的妥結を日本がやらかした場合、新たに結ぶであろう『日ロ平和条約』もまたロシアによって破られるのは時間の問題である。日本は今〝南西シフト〟とかいって中華人民共和国の軍事力に備えているようだ。これ自体はけっこうなことだが『日ロ平和条約』を過信して『北の方は安全になった』と誤った判断をし、北海道をがら空きにしたらどうなるか?(日本人はやらかしそうである)『日ロ平和条約』は『日ソ中立条約』のように破られ、北海道を半分くらいロシア連邦に占領されるかもしれない。ロシア人どもが「日本との条約など破っても新たな条約を日本と結べばいい。奴らは結局我々ロシア人の条約破りの利益を承認する」と企む可能性、極めて大である。


 下手な外交の結果、より危険な状況が生じてしまう。



 北方領土は地面の問題じゃないとはこういうことである。

 北方領土交渉で日本が『日本との条約破りで得たロシアの利益』を公認してしまったら今より危険な環境下に日本人は置かれる。二島が戻ってくると言われようと二島だけではダメなのだ。残る国後・択捉というロシアの不当利益を日本が公式に認めてしまえば日本は自ら危険を招き寄せることになる。故に日本人の安全のためには『四島一括返還』、そして『日ソ中立条約破り』を言い続けることが必要だ。

 今までの日本人は『四島一括返還』は言っても必ずしも『日ソ中立条約破り』を主張してはこなかった。要するに『主張すること』が仕事であるはずの日本の新聞やテレビはこれまで『外国が日本人にやった悪事』に寛容であった。外国が不利になる事実はたとえそれが明らかな事実であっても大きく取り扱わず追求もせず外国が不利な立場にならないような『報道』を繰り返してきた。外国人に対する忖度。日本人に対する差別。そんなものは日本人には必要ない。悪事が事実であれば容赦なく外国を追求すべし。これから未来はこのように改めなければならない。

 さて、マスコミに対する注文は済ませた。次はもちろん政治家だ。

 自民党の政治家よ(あっ、言っちゃった)、このままにしておくと鳩山由紀夫、菅直人以下の最低最悪の首相をあんたらの党から出すことになるぞ。

 本話のタイトルは【北方領土交渉について日本人の皆さんへ贈る手紙】だが日本人の中でも特に首相を含む政治家たちに贈りたい。



 正直これまでのpvの数値からして書いても意味など無いんじゃないかと思うけども、吉田松陰の心意気とはこういう感じだったのかもしれない、ということで倣ってみた。

 確か、首相はその吉田松陰先生を尊敬していると公言してました。



 至誠にして動かざるものは未だこれあらざるなり


                                                                      敬具

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