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ビジネスのホテルの白いベッドが、朝日にキラキラと輝く。
私は飛び起きた。
…昨日、愛しあった後、隣で寝たはずの宮川さんが、隣にいない。
少し、覚悟をして、布団をめくる。
透明のような、白いような虫…宮川さんがそこにいた。
長く綺麗な黒い髪も。優しい声も。雪みたいな白い肌も。
あの、天使のような笑顔も。
もう見れない。
ピコンと、LINEの着信音が響く。杏子からだ。
「あれー?中浜サボり?修美が心配してるよー」
私はそっと、スマホの時間を見る。
まだ、HRの時間じゃない。
私はそっと電話をかけた。
「杏子ー。先生に中浜風邪で休むって言っておいて。サボるから」
『「OK〜。あっ、そうだ。宮川さんしらね?宮川さんにオススメの本聞きたいんだけどさー」』
杏子の声が、そっとこだまする。
「ごめん、宮川さんはもう来ないよ。学校に」
電話の向こうの、いつものクラスの雑踏が響く。
私はその雑踏も、非現実的なものだと感じた。
「……わかった。一応”例の病気で宮川さん餓死自殺したらしい。中浜さんが遺書発見した”って言っておくよ。
……あんたは、悪くないよ」
杏子の方から電話を切られた。
私はスマホをそっと置くと、バッグの中からティッシュを出した。
そして、そっと宮川さんの体を包む。小さなポーチに宮川さんを入れて、身支度を始めた。
…
宮川さんに身寄りがあったら、家族に届けた方が良いことはわかっている。
だけど、宮川さんは施設育ちだ。
宮川さんを、私が持っていてもいいはずだ。
私はプランターと、土と、花の種を買って来た。
そして、私はポーチから宮川さんを取り出した。
大丈夫。潰れてない。
プランターの中に、土を入れて、宮川さんの体を包んだティッシュを入れた。
そして、その上から土を入れて、花の種を入れた。
「宮川さん。大好きだよ」
私はそっとプランターを見つめた。
宮川さんがそっと微笑んだ。そんな気がした。
陽炎天使の最後の望み 5月頭痛 @satukizutuu
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