第36話
「レン……何で!」
「ふふ、不思議だよねぇ?
簡単な事さ、あの場にいたのは僕の分身体だよ。
まず何事も疑ってみることが大切だって言ったよね?
ヒントをあげたつもりだったのになぁ?」
何だと……あれが分身体だったなんて!
全く気づかなかった……!
「止めろ、レン。お前じゃ破壊神は操れない」
「そんな訳無いじゃないですか。私は何千年と研究と魔力集めを続けて来たんですよ?」
「あれは人間がどうこう出来るものじゃない。今からでも遅くない、止めるんだ」
何千年だと? こいつは一体どれくらい生きているんだ……!
「黙れ! だからあなたを消しておきたかったんですよ……それなのに勇者も教会も使い物にならない……」
「勇者も……? どういうことだ、お前!」
レインが勇者という言葉に反応して問い詰める。
「そのままですよ。魔王を殺すように仕向けたのも、そもそも教会を作ったのも私ですよ。全ては計画の為ですよ」
「計画……だと……?」
「ええ、この際ですから教えてあげましょう。私はねぇ、そこの魔王が言ったように、破壊神を復活させるんですよ!!」
「破壊神……?」
「あぁ、そう言えば知ってるはずは無いですねぇ。破壊神は最高神と同等以上の力を持つ神何ですよ。忌まわしき最高神とその仲間の神に封印されましたがね……」
「最高神と同等以上だと!? そんな神は神話には……!」
「だから言いましたよね? 教会は私が作った、つまり神話も私が作ったんですよ。都合の良いようにね」
――アル、不味いぞ……こうしている間にも奴の分身体が破壊神を復活させる準備を進めている!
アテナ様、破壊神って何なんですか!?
――破壊神は最高神様の兄に当たる。奴は最高神様と一緒にこの世界を作った。じゃが、奴は必要以上に世界を壊していた。
創造神様はそれを止めようとしたが奴は反発し、この世界の大半を壊してしまった……
世界の大半を……なんて力だ……
――奴は我ら神々と最高神様で何千年もの戦いを経てやっとの思いで封印したのだ。それが解かれれば、
最高神様はもうおられないのですか?
――破壊神によって……殺された……
実の弟(妹)を殺すなんて……考えられない。
「馬鹿な! 俺もお前に利用されていたのか……!」
「まぁ、あなただけじゃなくて歴代の勇者全員を使ってきましたが誰一人としてそこの魔王を倒すことは出来ませんでしたねぇ。私自身でやれば良かったのですが、準備が忙しくてそれは叶いませんでした。命拾いしましたね、魔王」
「ふっ、よく言う。そんな魔力量でこの俺に勝てるとでも?」
「やってみますか?」
「いいだろう……ここで貴様を止める!」
「待て、魔王! 奴は分身体だ。こうしている間にも破壊神復活の準備が進められているぞ!」
「おっと、ネタバレは宜しくないですねぇ!」
レンは突如魔力を爆発的に増加させ、物凄い勢いで向かってくる。
分身体を1つ取り込んだな……それにしてもなんて魔力量だ!
「アイギスの盾!!」
俺は目の前にアイギスの盾を発動しようとする。
しかし、
「発動しない!?」
不味い、回避も間に合わない!
「ぐはっ!!」
俺は回避も間に合わず、レンの攻撃をまともに受けてしまう。
ミシミシ、と骨が砕ける音が聞こえる。
「がはっ……何故スキルが発動出来ない……!」
「その力が何か分からずに自分の物として考えるなんて……全く人間は愚かな生き物ですねぇ。あなた達はスキルとは何か知っていますか?」
「スキルは自分の成長として手に入れられる物だろ……」
「そこが違うのですよ。スキルとは元々は神の力、それを神が少し貸しているに過ぎないのですよ」
「だからと言ってこの場で使えなくなるのはおかしいじゃないか!」
「これでもわかりませんか……スキルとは神の力、スキルを使わせるも使わせないも神が決めるのですよ。そして創造神と破壊神はその全てをコントロールする権限がある。これで分かりましたね?」
「まさか……!」
「そのまさかです。私は創造神と破壊神の間に生まれた子なんですよ」
「創造神と破壊神の子だと……!?」
「えぇ、だから私はスキルをどうこうする権限がある。私の前ではスキルは使えないものと思った方が良いですね」
「スキルが使えないなんて……どうやって戦えば!」
――アル、聖女と勇者がそこにいるじゃろ? 二人にこう伝えてくれ。『今こそが聖戦の幕開け』と。
「分かり……ました。レイン、サンドラ! アテナ様から伝言だ!」
「伝言?」
「守護神から?」
「今こそ聖戦の幕開け、だ。何かあるのだろう?」
「「聖戦の幕開け……分かった!」」
二人は何か決心したように魔力を溜め始める。
何かの暗号か? 全く分からないんだが……
全く分からないのはレンも同じみたいだった。
教会を作った本人も神様の伝言が分からないというのはどういうことだろう。
「何をするつもりだ! 勇者、聖女!」
「何、今に分かる……サンドラ、準備OKだ!」
「行きますよ……」
「「顕現せよ! 神々の宴」」
サンドラとレインの膨大の魔力が空へと解き放たれる。
すると、空の一部が大きく歪み、巨大な穴が生まれる。
「まさか……貴様ら! 何をしたか分かっているのか! 神をこの世に降臨させるのにどれだけの負担が世界にかかるか……!」
「お前も同じような事をしていたじゃないか。さぁ、神の裁きを受けるがいい!」
「く……!」
「長らく探したぞ、レン! 貴様の犯した罪、ここで償ってもらう!」
武器を持った神々がレンの前に立ち、大きな声で威圧する。
神々がこうも並ぶとかなり威圧感がある。
「やぁ、アル。直接会うのは初めてじゃな。神の力を使った反動は大丈夫か?」
すると並んでいた神々の内の一人がこちらに向かって歩いて来たと思えばアテナ様だった。
髪は金で後ろで括っている。
どんな人かと思っていたら思っていたより若々しい、というかもはや10代に見える。
「ええ、特にこれと言って何も……」
「なら良かった。よく頑張ったな。後は我ら神に任せろ」
「はい……気をつけて下さいね」
「さぁ、レン。ここまでだ。我らが来たからには破壊神なんぞ復活させんぞ」
「うるさい黙れ! 貴様らは俺を捨てた……! こんな腐った世界、壊してしまうんだ!」
「それは貴様が危険な考えを持っていたからだ! さぁ、こちらに来い。地獄でじっくり罪を償うのだな」
「また俺をあそこに閉じ込めるのか! 二度とあんな所に言ってたまるか、うおおおおお!!」
レンは吠えた。
すると、周りに漂う魔力が神々が降りてきた裂け目に集まる。
「何をするつもりだ! 今すぐ止めろ!」
神はレンを止めようと魔法を放ったり、武器を振り下ろしたりするが、もう手遅れだ。
「貴様ら神々が来るのは分かっていたから利用させて貰った。せいぜい苦しむがいい」
そう言い残してレンは神々に殺された。
しかし、裂け目に魔力は集まり続ける。
「おい、誰か止めれるやつはおらんのか! このままでは奴が……!」
「ダメだ。魔法を極めた私でももうどうしようもない……来るぞ。最悪の神、破壊神が……!」
あの人は神話で見たな……確か、魔法神だったはずだ。
「誰が最悪だって?」
ゾォッ!!
全てが凍てつくような恐ろしい声が聞こえたと同時に魔法神の片腕が無くなる。
「ぐおおおお!?」
魔法神は回復魔法を試みる。
「させねぇよ、俺を悪く言うやつは許さねぇ」
破壊神の周りに太陽のような凄まじいエネルギーを持った火の玉が大量に生まれる。
「ま、待ってくれ! 嫌だ! 死にたくない!」
「死ね」
破壊神はただそう言って小太陽を魔法神に放つ。
ドドドドドと鼓膜が破れるかと思う程の音と同時に身が焼けるような熱気も襲ってくる。
「よくも魔法神を……皆、行くぞ!!」
神々は必死で破壊神を止めようと攻撃をし続けるが、全て破壊神の周りに漂う魔力弾に阻まれ、少し隙を見せればその魔力弾が飛び、命を奪う。
するとアテナ様がこちらに吹き飛ばされてきた。
「アテナ様! 大丈夫ですか!?」
「くぅ……大丈夫じゃ。守護神じゃから丈夫なんじゃよ……それより、人間は今すぐここから離れろ。死ぬぞ」
「そんな……」
「いいから行け! 早く!」
「分かりました……皆、撤退だ! ここにいては神々の邪魔になる!」
「悔しいがそうするしかないか……」
「全員集まれ! 俺が転移魔法を使う!」
魔王がそう言うので俺達は魔王の元へと移動し、転移する。
転移した先は人間と魔族を隔てる巨大山脈だった。
よく見れば戦いの様子も見える。
「神様……大丈夫かな……」
そういったその時、頭上が明るくなった。
熱さも感じられたので不思議に思って空を見上げると俺達は絶句した。
「太陽が……落ちてきてる……?」
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