第13話

「さぁ、出発するか」


「「「おー」」」


俺達は街を出て次の街へと向かった。


目的地は森を超えた先にあるザラクの街だ。

道中にある森は強いモンスターは、ほぼほぼ出てこない。

E~Bランクモンスターが出る、初心者でも活動できる森だ。




――ザラクの森――


街を出てしばらく歩くと森に着いた。


「ここを抜ければ街はすぐだ。一気に抜けるぞ」


俺達はコンパスを頼りに森を進む。


「あれ? これあってる?」


俺達はコンパス通りに歩いてきているのだがどんどんの森の雰囲気が変わっていく。


「コンパスは真っ直ぐこっちを向いてるんだけどなぁ。あっ!」


そう話しているとコンパスが何かに引っ張られるように飛んでいった。


「あ、あれ!」


そこにいたのは大きな亀だった。


その亀は体中に釘やら剣やらをくっつけている。


「なるほど。あいつは磁石の甲羅を持っているのか……」


「なら道間違えてるな。倒すか」


「仕方ない。倒さないと道がわからないしな」


「行くぞっ!」


俺は身体強化で腕力を上げ、亀の頭に斬りかかる。


亀は咄嗟に体につけている鎧を頭に移動させ、俺の攻撃を弾く。


「衝撃派!」


俺は剣から衝撃派を放つ。


衝撃派は頭についている鎧を粉々に砕く。


砕けた鎧の破片で亀の頭に少し傷がつく。


「オラッ!!」


続いてフロウが尻尾を攻撃する。


傷をつけられて動揺しているのか今度は鎧を移動させなかった。


「ガァ!」


亀は怒りを込めて咆哮する。


すると先程まで甲羅にくっついていた物が甲羅から弾かれるようにこちらに飛んでくる。


「まじかよ!」


「くっ! アイギスの盾!!」


俺はアイギスの盾を発動して止める。


剣に鎧、中には何に使うかもわからない巨大な鉄球なども飛んでくる。


「こいつ何くっつけてたんだよ!」


「今なら行けるぞ! たたみかけろ!」


「任せろ!!」


フロウが亀に突撃する。


「砕け散れ! 破壊クラッシュ!」


フロウは近接魔法を発動し、甲羅に触れようとする。


「ガァ!」


亀は再び物を引きつける。


「まずいっ!」


フロウはそこから離れようとするが間に合わず、鎧と甲羅の間に挟まれてしまう。


「動けねぇ……」


「フロウ!」


「防御力移動!」


俺は亀の防御力を全て自分に移動させる。


「能力変更、防御力を攻撃力に!」


そして防御力を攻撃力に変え、身体強化で更に力を上げる。


「おおおおお!!」


「ガァ!」


亀は危険を察知したのか磁力を操り、全てのものをこちらに飛ばしてくる。


「クソっ!」


俺は空中に小さめの結界を張り、それを蹴って方向転換する。


しかし、鉄も方向を変えてこちらに向かってくる。


「ホーミングかよ!」


俺は結界魔法を駆使し、逃げる。


「セリィ! 攻撃は任せた!」


「分かった!」


「目を閉じて! 閃光フラッシュ!」


ナージャは光を発生させ、亀の目を見えなくする。


「はっ!」


そして、セリィは無詠唱で巨大な氷の刃を生み出し、亀に撃つ。


「ガァァァ……」


氷の刃は亀の甲羅を貫き、肉をも貫通した。


そして亀は動かなくなり、俺を追いかけてきていた鉄も地面に落ちていった。


「フロウ、大丈夫か?」


「ああ、大丈夫だ。すまんな」


「無事で何よりだ。さ、剥ぎ取りして街に向かおう」


「「「おー」」」


俺達は亀の甲羅を剥ぎ取って移動した。





――ザラクの街――


「ふぅ、着いたぁ」


「道中魔物に絡まれたからねー」


「もう日も暮れてきてし色々するのは明日にしようか」


「そうだね」


そう言って俺達は夕食を食べるために街で店を探していた。


すると人集りが出来ていた。


「なんだなんだ?」


「集まってるの皆女の子だね」


「真ん中に誰かいるな」


「あ! あれレインだ!」


「レイン様!? ちょっとあんた達どきなさい!」


セリィがレインと聞いた瞬間、集まっている女の子達を押しのけてレインのすぐ近くに行く。


「レイン様! お久しぶりですね! 私セリィです。覚えてますよね?」


「もちろん覚えているよ。久しぶりだね」


「よっ、レイン。久しぶりだな」


俺はセリィの暴走を止めるために話に入る。


「アルじゃないか! お前達はこの街に何しに来たんだ?」


「迷宮攻略ですわ!」


俺が聞かれたのにセリィが答える。セリィは邪魔するなと言わんばかりにこちらを睨んでくる。


ひぃ怖い。でもここで退いたらセリィがどんどんエスカレートしてしまう。


「俺も一緒だ。お父様に頼まれてな。強力な助っ人を呼んでおいたからとか言われたがお前達か?」


「どうだろう? 俺達も国王陛下に頼まれたがレインを助けろとは言われてないな」


「一緒に行きましょう! その方がよろしいですわ!」


セリィはグイグイ押している。そして周りにいる女の子達を睨みつけている。


女の子達はセリィの迫力に押されてか、ぞろぞろと帰って行く。


しかし、1人だけ帰らなかった女の子がいた。


「レイン様を独り占めしないでくださる?」


その女の子はセリィの腕を掴み、そう言った。


「何ですって? そんなこと言ってないでさっさと帰ったらいかが?」


「そっちこそさっさと帰ったらいかが?」


「何ですって! もう一度言ってみなさい!」


「何度でも言いますわ! 帰りなさい!」


「レイン様を奪おうとするやつは許さないわ! はっ!」


セリィは魔法を発動しようとする。


「ストップ!」


レインがそう言うとセリィが生み出した魔法陣がパキィンと音を立てて砕ける。


「喧嘩はやめてね?」


「「はい……」」


レインのおかげで何とか喧嘩は収まったようだ。睨み合ってるけど。


「あなたは?」


「私はサンドラよ」


「よろしくね、サンドラ」


「はい、よろしくですわ」


「おいレイン、さっきのどうやったんだ?」


「ああ魔法陣を壊すやつか? あれは魔法の一種さ」


「あれも魔法なのか? スキルか何かかと思ってたが」


「魔法ってのは魔力がきっちり制御されてるだろ?

そこに無理矢理魔力を送り込むとバランスが保てなくなって壊れるって原理さ」


「なるほど。今度試してみるわ」


「迷宮行くってことはお前達も冒険者になったんだろ?」


「ああ、色々あってもうA級冒険者さ」


「まじかよ! すげぇな」


「お前は? 勇者なんだろ?」


「勇者は勇者っていうランクがあるのさ」


「そうなのか。じぁまた明日な」


「おう」


俺達は「まだ離れたくない!」と抵抗するセリィを無理矢理引きずって夕食を済ませ、宿屋で休んだ。



――翌日――


「さ、まずギルドに行こうか」


俺達はギルドに向かった。


事情を説明すると会議室に通された。


「君達がアイギスだね」


「はい」


「話は聞いているだろうが君達はこれから迷宮の攻略をしてもらう」


「分かってます」


「で、とりあえずこの街では勇者レイン殿と一緒に攻略してもらう」


「え? それは何故でしょう?」


「国王陛下のお考えだ。君達は彼の友達だとか」


「まぁそうですけど……」


「で、この街の迷宮を攻略したら、レイン殿は賢者や聖女などを連れて魔王討伐に向けて動かれるのだ」


「なるほど」


やっぱりいるんだな。魔王。


勇者の指名って感じするもんな魔王討伐って。


「とりあえず今回攻略してもらう迷宮について説明しようか」


「お願いします。レインは聞かなくて良いんですか?」


「昨日既に説明したから問題ない」


「そうでしたか」


「で、迷宮何だが場所はこの街を出て少し離れた所に山がある。そこの頂上に入口がある」


「山に登らないと行けないんですね」


「ああ。ところがその山は稀にAランクモンスターが出るから気をつけてくれ」


「わかりました」


「それでその迷宮は今59階層まで攻略されている」


「60階層のボスモンスターが倒せないと?」


「そうだ。しかし、そのボスが最後では無いのだ」


「まだ下があるんですか……」


「ああ、討伐隊の証言によると下に続く階段があったらしい」


「なるほど」


「だから君達には最下層に到達し、そのにいるボスモンスターを討伐して欲しいのだ」


「わかりました」


「そのために必要な設備等は自由に使えるようにしておくからこの証明書を持っておいてくれ」


「ありがとうございます。では」


「よろしくな」


俺は会議室を出た。


「何の話だった?」


「レインと迷宮攻略することになった」


「勇者とか! 千人力だな!」


「レイン様と!? しめしめ……」


セリィさん、しめしめとか今どき誰も言わないよー。


「じぁレインと合流して準備してから迷宮に向かおうか」


「「「おー!」」」


俺達はレインが泊まっている宿屋に向かった。

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