番外編SS『女だった過去を持つ』(マックス《悠花》視点








 *・*・*(マックス《悠花ゆうか》視点)










 とうとう……。


 とうとうなのよ!?


 あたしとエイマーの、結・婚・式があああああ!!


 一年以上かかったけど、フィーの後に出来ることになった。


 で、今日がその本番。


 あたしは……今世では男だから、当然タキシードぽい正装だけど。それを着て、ただいま待機中。


 暇で暇で仕様がないわん!!



(んふふ〜!! チーちゃんに頼んで、フィーん時と同じウェディングケーキは頼んだし)



 前世では出来なかった……憧れのファーストバイト!!


 エイマーと出来るだなんて、ほんと……し・あ・わ・せ!!


 ああ……早く愛しの花嫁を拝みに行きたいわん!!



「悠花さーん、チャロナだけど」


「はいはーい?」



 我がマブダチこと、将来の護衛として仕えるカイルの婚約者。


 チーちゃんが、あたしを呼びに来たわ〜?



「おお! やっぱり似合うね!!」



 あたしの麗しな正装を見て、チーちゃんは拍手してくれた。チーちゃんは料理の関係で……参列はしてくれるけど、今もコックスーツのままだわ。



「んふふ! エイマーの旦那として相応しい?」


「うんうん、絶対大丈夫!」



 いぇーい、とハイタッチするくらいの出来栄えね?



「エイマーの方も出来たの?」


「うん! すっごく……すっごく似合ってる!!」


「…………攫いに行っていいかしら?」


「ガチトーンで言うセリフじゃない!?」


「だってぇ」



 このあたしの花嫁なのよ?


 一応……エイマーはフィーんとこの家の養女。あたしは生粋の貴族。


 貴族らしくしなきゃいけないのはわかっているけど……こう、他の男共の目にあたしだけのエイマーを晒すだなんて嫌だわ!!


 転生して二十何年経ったけど……男としてだいぶ浸透したってことね? 中身は相変わらずだーけーどー?



「とりあえず、行こうよ! エイマーさん待っているから」


「もちのろんよ!!」



 待っていてね、あたしのエイマー!!



 式の会場は、あたし達が今日まで生活してきた……カイルの領主としての屋敷。


 結婚しても、エイマーはまだまだ修行不足だからとこの屋敷に留まって……シェトラスやチーちゃんと一緒に働きたいことを選んだ。


 あたしも、カイルの護衛として一応滞在理由にもなるからもちろん了承したわ。



「エイマーさーん。マックスさん、連れてきましたよー?」



 中にはあたしん家のメイドもいるので、あたしがおおっぴらにしてない前世の名前とかを言えない。なので、チーちゃんはマックスの方で声がけしてくれたわけ。



「……どうぞ」



 愛しのエイマーがゆっくり返事をしてくれたので中に入れば。


 これは何事!? と叫びたくなったわ。



「……エイマー」



 なんて……なんてこと!?


 あたしは、ユリアのような女神をたぶらかしたわけじゃないのに……!!


 あたしの花嫁が、世界一の美女に大変身していたわ!!?



「ど……どうだろうか?」



 純白の花嫁ドレスに、可憐な花束。


 もう……もう、今にでも攫いたいわ!!?



「……似合ってるぜ」



 けど、それはエイマーの望んでいることじゃないでしょうから……我慢はしたけど。


 あたしは、本当に幸せ者よ?


 前世が女で、元彼に殺されはしちゃったけど……マブダチも、運命の相手も出来た。


 幸せで堪んないわ!!



【ほんとでやんすよ、マスター】



 そんでもって、あたしより先にロティちゃんと結婚したレイには……結構心配かけたわ。


 先に身籠らせたことには腹立つけど!?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る