191-1.婚約それぞれ






 *・*・*











 マシュラン達と和解出来てから少しして。


 カイルキア様が、私達の婚約パーティーを開こうと言ってくださったのだ。



「……少し遅くなったが」


「……いいえ」



 色々あったから、遅くないこともない。


 お城で生活することを選択しなかった私は、婚約者となっても相変わらずパン作りなどで厨房で働いている。この先ずっと、その生活を続けられるかはわからないけど……婚約に反対したいわけでもない。


 だから、大丈夫だとカイルキア様には告げた。



「……ほーんと、あんた達遅過ぎよん?」



 執務室から出た後、悠花ゆうかさんと遭遇したので私の部屋でおしゃべりすることになった。



「そう??」


「だって、カイルもだけど……チーちゃんだって、好きとか気づくの早かったじゃない??」


「……悠花さん達ほどじゃないけど」



 なにせ、人生の大半が片想いだったんだから。


 そう言えば、悠花さんに何故かデコピンをお見舞いされてしまった!?



「カイルも似たようなもんよ。チーちゃんは流石に赤ん坊の時の記憶ないから無理だろうけど」


「そりゃそうだよ……」



 悠花さんと違って、私が転生者としての記憶が戻ったのはごく最近だ。いきなり、赤ちゃんでカイルキア様を好きになったと言うのも無理がある。



「けど、結婚ねぇ? フィー達のも式が延期になったし……あたしもいつにしようかしらん?」


「ケーキ作りも延期だもんね??」



 けど、何回かは試作しなくちゃ。


 なので、今日は定番中の定番であるショートケーキを作ることにしました!!


 冬手前だからか、秋苺よりも大ぶりのサイズの苺がライオネルさん達庭師さんが手塩にかけて育てたものがたくさんあるから。



『いちご〜!! いちごでふぅううう!! つやつやいちごでふよぉおおお!!』



 ロティは作ると伝えたら、きゃっきゃとはしゃぎ出した。精霊とは言え、女の子はいちご大好きだもの??



『ショートケーキってなんでやんすか??』



 ロティの彼氏であり、悠花さんの契約精霊であるレイ君はこてんと首を傾げていた。高校生くらいの見た目だけど、かっこかわいいんだから!!



「生クリームとフルーツ。スポンジケーキを使ったシンプルなケーキよ? いちごじゃなくてもいいけど、いちごが多いわ」


『ほーん?』



 とりあえず、まずは作ってみるべし!!


 生クリームを大量にホイップにするのと……ケーキ生地を作るのに卵をたくさん割ったり。


 大変だけど、ウェディングケーキの1/3サイズを作るためだから頑張らなくちゃ!!



『混ぜ混ぜ〜まーぜ混ぜ!!』



 ロティは撹拌機ミキサーになっても、楽しいのか歌を歌っている。そして、出来上がったホイップは軽い感じで食べやすいホイップに仕上がっていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る